選出作品

作品 - 20080905_280_3006p

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ロッキー山脈

  ミドリ


アラームが鳴った
クマはスヌーズボタンをポチっとな押すと
結論から言うとどうなんだ!と部下に迫った
青年は手元の資料にじっと目を落とし
固まってしまった

窓の外はすっかりと暗くなっていた
湿った強風は渦巻き
ロッキー山脈にぶつかってすでに南下していたが
積雪は例年と変わらない
クマは目を閉じ腕を組んだ
ピッタリと閉じられたブラインドをさっと上げ

数字がないなら所感だけでもいいと
クマはゆっくりと青年の肩に手を回した
震えているのがわかる
この男には無理かもしれない
そう思った刹那クマは自分の若いころを思い出した

猛吹雪の中
スリップした車を押して顧客を回った
本社に何度も電話し教えを乞うた
会社の前で立ち止まり言い訳を考えた
不器用だった俺が
今こうして部下の肩を叩いてる
そう思えて笑えた

青年の不安げな顔がさらに歪む
何一つ無駄じゃないさと
咽喉元まで出かかった本音を
ゴクリと飲み込む
もう一日やる!
そう言ってクマはオフィスをバンと出た