十四夜
寝息で僅かに上気した湯呑茶碗が傾いて
秒針が束になって落ちてきた
石壁に焼かれた人の影が何度も寝返りを打つ
日焼けした天使が羽根を休めている向こうで
夏の闇に浮ぶ少女の輪郭が
首振り扇風機にあたって千切れそう
差し延べた指先が少女の目に触れ
巣立ったばかりの小鳥たちが
溢れでる涙を啄み 寝静まった町に落としていった
十五夜
半尻を出して熟睡している妻のベットに
八方美人の神様が下りてきて添い寝している
その姿を夢中になって撮っている妻が一杯いて
望月があちこちに転がっていた
選出作品
作品 - 20080805_715_2940p
- [佳] 八十八夜語り ー夏嵐ー - 吉井 (2008-08)
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八十八夜語り ー夏嵐ー
吉井