選出作品

作品 - 20080705_133_2877p

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屋根の上のマノウさん

  Canopus (角田寿星)


空にはいくつもの泡のような放物線が
とんびが 海のむこうの出来事が
屋根の上にはマノウさんが
わたしたちは
目を閉じて見上げよう
歩道沿いにはあやめの花壇が
街角のアパルトマンには大きな鏡が
わたしたちは

そうしてマノウさんは屋根の上にいる
むくどりが少しやかましい
あるいはホイッスルかもしれない

山からの風がふく
タバコの灰がぱらぱらとこぼれる
砂に埋もれるようにわたしたちは眠る
「ちいさな善意や励ましや何気ない笑顔が
 どれだけ人を傷つけているのか
 考えたことがあるか」と吐き捨てられる

そうしてマノウさんは屋根の上にいる
かるい会釈だけのあいさつをする

昼下がりには真っ赤な鉄塔が
夕焼けには緑の浮き島が
夜には汽車が
わたしたちは目を閉じて見上げよう
屋根の上には マノウさんが