わたしはあおむけに
すこしずつ流されていく
かわべりにつかまるあしくびを
あらく研がれたくさがくすぐる
月があまくとろけ
むすんだくちのすきまからすべり
満たそうと
ささやきかけるからいっそうくちをかたく
むすんでこばもうとする
やがてこらえきれず
みなもにこぼれてしまう
くろかみのかげに小魚がむらがり
うろこをいくつか落として
あえぐこえもなく性交をおえると
つめたいままわかれてかえるところもない
かかとだけをのこしておしりのかんかくも
うしなったはずかしさもうしなったわたしはただ
おしまいをまつだけのからだになってしまったことに
たえるひつようさえうしなったわたしはもう
ただはやくあさがくることをねがっているだけで
おしまいのあとのはじまりをばかみたいに信じてみたいだけで
かかとにすこしのちからをこめてくちをひらく
さようならをするわたしは
あおむけに流されながら月をまといきらめいて
みぎからひだりからおなじように流されるひとたちと
とてもつめたい手と手をつなぎあわせ
さようならをするわたしたちは
たったひとつの意味さえ持たずにきらめいて
静寂のなかで幕がおろされ
明かりがついた客席にはだれもいない
選出作品
ending
泉ムジ