さ
三匹の猫はマグカップの絵付けのように
まばたきもせずネメシアの花の遥かむこうを見ている
語りつくした言葉のあとさきに長い行列ができ
需要と供給の曲線が幾重にもよじれてしまった
――かじきまぐろのコトレッタ美味しゅうございました
――それはようございました
さて
むかえのベランダの柱が一本折れていて
雨にろ過された水のにおいがする薄青緑のブラジャーが干してある
みちのくの大物産展と春の聖火リレーをはしごして日本海に出た
あっ当選応募はがきを忘れて来てしまった
――バンホーテンは粉っぽくていけない
――さようですか
さてと
電線に止まろうとした烏がこけて
照れ笑いしながら鷹になりすまして滑空している
突き出された言葉の穂先が160キロの硬球を刺し
わかってるくせにと言って少年は頭を小脇にかかえて通り過ぎた
――豚しゃぶに使うお野菜キャベツではなくレタスにしてね
――はい奥様
選出作品
作品 - 20080415_278_2701p
- [優] さてと - 吉井 (2008-04)
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さてと
吉井