選出作品

作品 - 20080216_406_2612p

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ゆびさき

  凪りん

あなたは、そのたおやかなゆびさきをしなやかにうごかして、せかいを、瞬く間に変えてしまうけれど、わたしは、見渡せるせかいからはいつまでもぬけだせないままで、途方もないことばかりを探してしまうから、もう、
遠いところへいくことはできないのだと、思う。 
まわりには、たいせつなことばたちがあふれているから、きっと、この海でおしまいなんだって、そう思うから、だから、ねぇ、あなたはそのゆびさきで、これからもいくつものせかいを変えていってほしい。
遠くに浮かぶ灯台の灯のようなやさしさで、いつか、いつの日か、せかいじゅうの海があたたかいものであふれかえるまで、そのゆびさきを、ふるわせながら、この海をこえてほしい。
 
 
わたしのゆびさきは、あなたのようにうつくしくはなれないけれど、あなたが、あなたがうつくしさを教えてくれたから、この剥がれた皮はじきに固まって、ゆびさきを、いまよりもぎゅっとつよく、
やわらかくしてくれて、そしたら、ほら、だいじょうぶって、あたらしく生まれてきたあたたかいものを、わたしは抱きしめることができると思う。
そのころに、
もし、あなたのやさしさがわたしの海まで流れてきたなら、その時はあなたの仕草で、
ゆびさきをていねいにうごかして、この、
あふれかえる青の中に、あなたへの手紙をそっと、
祈ろうと思うんです。