つごもりの月が
何事もなく通りすぎるように
逆立ちしても感覚できない世界が
鼓膜を隔てた外耳の向こうにあった
あなたは降りつづける雪が見る夢のように
わたしのそばで一途にセーターの毛玉を取っている
朝取りの真子かれいは腹這いに並べられ
その黒目はわたしを追い求めてなおも呼吸していた
便器の底に沈む顔の影が
今日より先もずっと
見るよりも儚く想うよりも切なく
外耳の向こうにゆれてあった
選出作品
作品 - 20080207_173_2597p
- [佳] 雪の日に - 吉井 (2008-02)
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雪の日に
吉井