選出作品

作品 - 20080207_173_2597p

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雪の日に

  吉井


  つごもりの月が
 何事もなく通りすぎるように
 逆立ちしても感覚できない世界が
 鼓膜を隔てた外耳の向こうにあった

 あなたは降りつづける雪が見る夢のように
 わたしのそばで一途にセーターの毛玉を取っている

 朝取りの真子かれいは腹這いに並べられ
 その黒目はわたしを追い求めてなおも呼吸していた

  便器の底に沈む顔の影が
 今日より先もずっと
 見るよりも儚く想うよりも切なく
 外耳の向こうにゆれてあった