選出作品

作品 - 20071017_628_2387p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


[みあげたら  海]

  香瀬


[みあげたら  海]





やどぬしは
いくつもの毛穴から
塩があふれ
こわばった天井のすみに
影に
こりかたまる  海
りょうてでおさえても
ぬいつけられた影は
やどぬしを浸しつづけ
あふれをとめることはできないのです
塩にむらがり
もうすぐ またふえることになる天井のすみへ
影は
みず浸しになることも
わるいことではないのかもしれません
、と きこえる羽音も
いまでは塩づけられている影に
のみこまれようとしています
あふれつづけている羽音は天井のすみになり
(あるいはさっかくであるかもしれない境目も)
浸される
どこから毛穴なのかわからないから
どこまでも  海
天井のすみなのです
、と もうきこえなくなった羽音は
おびえ
ひろがりをやめない境目のすみは
天井をころし
やどぬしはみあげていたくびすじを塩になでられながら
けいどうみゃくから
羽音をぬすまれることでしょう
(あるいはみおろしていたのかもしれない海を)
ころされた影は
塩のかせきとなることをえらばされ ひとつ
またひとつ 沈殿しては てばなされる境目も
ともにやどぬしが塩となることで
海は羽音でみちみちていきました//みちみちて いきました
やどぬしのかせきをかかげ
すべてはさっかくだったのですね
、と いつまでも沈殿をやめない天井にむかう羽音に
影と塩が
うちけされた境目のかずだけ うがたれた
やどぬしは
みちみちているのです  海