選出作品

作品 - 20070421_827_2014p

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「水性学」のためのジャンク群

  浅井康浩

鉄路

ひややかな夜明けはどこまでもぼくたちのやすらぎを束ねていってしまうから、かぎりあ
る鉄路はなにげない眼差しのまま見限ることとして、さりげなさからはすこし離れたよう
にばらまかれていた繊維質のしなやかさへと視線をそのままにして、けだるそうに逸らせ
てしまうことも、あなたとなら、できたにちがいない
たとえば、曇った日の午後、小鳥のさえずりが聴こえるなかで、

学区

眼を閉ざしてゆく
あなたのいない歴史の時間はつまらなくって、
ポーランドのポーっておとでねむりがはじまる。
教室でねむるあなたに会うために、
キャラメルのとろけるはやさのすこし遅めで、と、いいきかせつつ眠れ、わたくし。



あたしのやさしさを拠りどころにするまえのあなたを見ようとして、息をひそめてしまう
ごとのキュッっていう鳴き声は、空気にとけてゆくたびに、立ちくらみへと変わってしま
う。うとましくおもうこのからだの、そのすべてをめぐる酸素から、うるおいを消してし
まった水分の粒子を受けとってしまうあたらしい予感が、わたしをどこまでもうつむかせ
てやまない。はやく、みみたぶの裏側へと、だれにも知られることなくさみしさを溶け込
ませてゆくあまやかなそぶりに身をゆだねてしまいたい。

教会

祈るとき、あなたの咽喉からこぼれだすやさしいうたは風にほどけて、かぼそいほどの雨
だれとなる。そしたら、ゆるやかなあまさへと滴ってゆく調べからすこしずつとりのこさ
れる約束をして。そして、くちずさむ速度でちりばめてみて。

湖畔

ほとりへとしずかに、ながされてしまうことのおぼつかなさに、そっと、わたくしに芽生
えはじめていた襞はふっつりと消えいってしまって、もう、溺れおわったあとにあらわれ
てくる、あのいちめんの深さがなによりの眠りだと感じてしまうしかない弱さというもの
を受けとめることさえできなくなってしまう。ねぇ、いちどだけ、ふりかえりさえすれば、
こんなにもさりげなく口笛をふいてきたあかるさというものを見させてくれるような気が
するから、ねぇ、もうすこしだけ、