マッチ箱を連ねたような電車はN市の市街をでて
まだ冬の景色をのこす田んぼの中を東に進んで行く
終点の駅 ホームの砂利の上にぼんぼり堤燈がともり
人々の群れを導くように丘陵の深い森へと続いている
この橋を渡る時は親指を隠すように手を握るのよ
そう教えてくれたのが誰なのか私は忘れてしまった
山椒魚のかたちの小さな池にかかる苔むした石橋
約束を忘れた子供は親不孝な子になるとの言い伝え
ハラハラと舞う薄紅の花びらに包まれて
先祖を祀る社へ連なる石畳を上って行く
黒い空を覆い隠すように浮き上がる花びら
ひとときの命をくれないに染めしばし戯れむ
選出作品
作品 - 20070122_713_1792p
- [佳] 悠久山 - レオ (2007-01)
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悠久山
レオ