選出作品

作品 - 20070101_115_1731p

  • [佳]   - klo  (2007-01)

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  klo

ぼくはベランダに立って
ジョウロで水を撒き散らしていた
すると水に混じって
小さく痩せ細った男が流れ出ていった

男は先っぽから出た瞬間に元気よく
「おはよう」といった
顔ははっきり見えなかったが
声の感じからしてたぶん微笑んでいると思った

だが数秒後には男の悲鳴が聞こえた
空が急に高く広くなって
ぼくには静かな頭痛がして
地上にあるものは何もかも歪んで映った

顔を突き出して見下ろしてみると
アスファルトの上には
蛙でも破裂したかのような
大きな水の滲みが広がっている

カラスが飛んできて水の上に影が落ちると
それはどこまでも黒ずんで底を漁った
それを見たのは町中で
ぼくひとりだけだった