君の柔らかな陰毛の生える
丘のふもとに
小さな家を建てて
大きな犬と暮らしたい
そして毎日、朝から晩まで
絵を描いて暮らしたい
君のなだらかな肌の起伏は
いつも僕の霊感を刺激して
つきる事のない創作意欲に
駆り立てられた僕は
飽きることなくキャンバスに
絵筆を走らせるだろう
朝には朝の君がいて
夜には夜の君がいて
君のちきゅうを中心とする世界は
1秒も止まることなく変化を続け
いつも、いつでも
黄金に輝く君の肌に、僕は
黄色い絵の具をたくさん使うだろう
ヴァン・ゴッホと名付けた僕の犬は
君の柔らかな肌の上を
ぽんぽんと跳ねながら
てんとう虫なんかを追いかけ回すだろう
そして時には気晴らしに
あの遠くに見える二つの山に登って
その頂上から湧き出るミルクを汲みに行こう
おへそと呼ばれる
小さな凹みに降りていくのも良い
そこでお弁当を広げて、陽が沈むまで
鱒釣りなんかをしても良い
リチャード・ブローティガンと名付けた僕の犬は
その時の僕の最高の
サンドイッチとなるだろう
そうだ、君の左の鎖骨のあたりに
ちょっぴり栄えた街があるから
ウィスキー片手にのんびりと
ヒッチハイクでもしながら街まで行って
さびれた酒場で
一日を台無しにしてみるのも良いかもしれない
ジャック・ケルアックと名付けた僕の犬は
僕のくだらない冗談にも
快活に応えてくれるだろう
君のおっぱいの山の谷間に
夕陽が沈み
部屋の中いっぱいに広がる
オレンジ色の夕陽の中で
ロッキンチェアーに揺られながら
僕はお気に入りの詩集を読もう
そして簡単な夕食のあとは
気の向くままにギターを弾こう
歌を歌おう
その時の犬の名前は
ボブ・ディランにしようか
ミック・ジャガーでもいいな
君の柔らかな陰毛の生える丘に
柔らかな風が吹き
そうやって何年も、何十年も
過ぎたあと
君のその素晴らしいちきゅうの上に
僕と犬とで、寝っ転がって
黄金の午後の陽を浴びながら
子供の頃、母親が指に刺さったとげを
すっと引き抜いてくれたように
死神が
僕の魂をそっと引き抜いて……
そんな風に僕の命が終わればいい
君のその永遠のちきゅうの上
寝っ転がった僕と犬は
永遠の日なたぼっこで
僕も犬も気がつかないうちに
そうやって、静かに
僕の命が終わればいい
選出作品
作品 - 20061204_778_1692p
- [優] ちきゅうのふもとで、犬と暮らす - ヒダリテ (2006-12) ~ ☆
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ちきゅうのふもとで、犬と暮らす
ヒダリテ