選出作品

作品 - 20061122_598_1670p

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中心には風がない

  klo

星に駆けあがろうとするスカーフ
壊されたばかりで
まだレンガが燃えているのに
喉の禿げあがった鳥たちが舞い降りてくる
足跡はまだ温かい

ぼくは猫の腹を流れる川に耳をつけた

切れていく雨音、
倒れたドア
ぼくは目を閉じた
ぼくは目の奥に奪われていく

電柱には虫の影がぼろぼろになってくっついていた
七色の瞬きは死んだ人を流して
最後には空にぽんぽん投げ出してしまう
ぼくの舌は
喉にからまって煙をあげた
空が、
ぼくの肺で羽根が裏返る
草の恵みを
光が、焼き払ってしまう

残された街を
ぼくは揺れて
噛み切られた水平線の焦げたところから
まだ生きていないぼくを見つけた
風の重力と、
ハガキを燃やして
黒点が
細胞に紛れ込んでくる

ガードレールの下には川が流れた
ぼくはすでに
ぼくはロープを食べてしまった
ぼくには髭が生えてくる
ぼくは鉄の肺を手に入れて
夕日を浴びていた
まだレンガが燃えている
ぼくは
街の名前を、思い出そうとする
ぼくは
誰かの足跡を見つけた