時折の結末に揺れたかがり火が
歩きすぎた並木道の終わりに
洞窟の中で彫り続けたせかい
あるいは 歩き出した前足
海沿いを走る最後のけもの
大陸が分かたれていくリズムで
たゆたう熾火の陽炎に絡み合う
歩く人の足元にはいつも
解き放たれた手のひらがこぼれるのを
ぼくはいつも見ていた
なんどもなんども
そうやって 重ねた
頼りない歌が 海を越えて小さく響いている
痩せたベースラインにつかまって
フラメンゴが片足立ちするみたいに
空がやわらいでいく
ジャスミンの葉が燃えている
香炉に浮かんだ分かれ道の辺で
最後のけものは足を止めて
海はそうやって繋がっていく
子供たちがいっせいに風船を飛ばそうとしている
原色のシャツが溢れた海辺で
歩き出した最後のけもの
せかいは描かれていく
本当は絵が描けたらよかった
ひかりが重なって透明になるみたいに
そうやって解けていければよかった
星を繋げていった人たちみたいに
くちびるが分かたれて
子どもたちの重ねたサンダルの跡を
最後のけものは追いかけていく
どこまでも透明に近い花を添えて
選出作品
作品 - 20060310_136_1037p
- [佳] せかい(最後のけものに) - ケムリ (2006-03)
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せかい(最後のけものに)
ケムリ