発光する街並から
少し離れて
星空の下黒く沈む海
漁港のコンクリートが
冷たく海を拒んで
貨物列車の汽笛が
夜の波音と共鳴して
湿った静寂に響いてる
ぬらぬらと
揺らめく海面が
当てなく立ち尽くす
足元をすくい
闇に飲み込もうと
誘い続けてる
眺めているだけでよかったんです
岸に沿って慎ましく灯る
人の住まう証に縋りつきながら
夜の闇に溶けるという誘惑と
何も望まない虚脱と
海の鼓動の繰り返す潮騒と
心臓の押し出す脈の
調和を見つけだすまで
眺めていただけなんです
夜明け前にここから
何も持たず立ち去るつもりで
海蛍を探しにきたんです
見つけられたら
その仄かなあかりを
眺めているだけでよかったんです
選出作品
作品 - 20051122_449_763p
- [佳] (無題) - 獏 (2005-11)
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(無題)
獏