西日の丘から伸びる教会の影が
十字に伸びる世界に唾を吐いている
熟れた背中を蹴り飛ばした沈む林檎の匂い
月がドラッグされていく
星を隠した生まれたての掌
滲み始めた灯りを憎んでいる人がいるよ
カスミソウをひとつ 手折っていく
錆びた線路を枕にして
歌うひとは世界から剥がれていく
警笛が鳴り響く
長い夜に別れを告げた子ども達
眠るあなたを蹴り石にして
夜の淵は送電線の向こう側
誰かが繋がろうとしている
カテーテルが突き刺さった鼻腔を並べて
歌いながら剥がれていく
電話ボックスが吊りあがっていく空
羽虫が光を纏いはじめた
指先に群れた星を掻き散らして
子ども達はもうヘッドフォンを外せない
路地裏の糸を引いて 誰もがエクソダスを歌った
大腿骨咥えて嗚咽を堪えたら
滲む灯りを一つずつ舐めとって
歌いながら剥がれていく 断ち切られた 世界へ
選出作品
作品 - 20051110_159_719p
- [優] 断ち切られたら - ケムリ (2005-11)
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断ち切られたら
ケムリ