国際通りを歩いていたら
みるみる空が曇ってきて
あわてて喫茶店へ駆け込んで
濡れた髪のままコーヒーを飲む
待ってる間に電話を掛けて
那覇で待ち合わせできる時間を答えて
平屋の吹きぬけの
畳の気持ちの良い部屋でハジメと会う
海とか空とか太陽とかに
すっごい魂が混じっている気がするんだ
死んだり病気したりすることが
この空の下で
生きてことが感じられるんだ
ミサトから電話が掛かってきたのは
ひめゆりの塔と首里城を見て
ハジメと一泊する民宿の窓
気持ちの良い風の中
週末はナイトマーケットになる
色とりどりの屋台の道
立ち食いのブラジル料理をふたりで食べて
小さなゲップをした後
生ぬるい夜風の中
ハジメの肩にもたれかかって
公設市場の棚の上にある
ゴーヤーを一本掴んで
タンクトップでサンダルの
私の見えない心を掴む
そしてハジメとふたりでトイレに入って
好ましくない格好で抱き合い
ガンガン ビールをあおって
本能の行方を追うような
濃厚なキスをした後
ミサトの着信へリダイヤルする
言葉にできるほどの
いま確かなものがここには無くて
さらに遠くなっていく気がする
<さよなら私の街 ミサト>
選出作品
作品 - 20051031_932_685p
- [佳] 那覇 - ミドリ (2005-10)
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那覇
ミドリ