選出作品

作品 - 20051029_871_677p

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眠れバオバブ

  ケムリ

如雨露の淵で溺れる蚊トンボに
乾いた骨の擦れる音がする
塩化銅の水辺に真っ赤な葦の啓示が咲いて
子ども達は靴底に優しさを隠した

如雨露がポケットに入らなかったから
みんな両手に青い水を掬って
梳る世界に虹がかかればいいと
やわやわと溶け合うことを夢見ながら

無脊椎の魚が煙の中を
無色透明な友達の影を連れて
補助輪の付いた自転車の音色が
地平の果てに嘘を運んでいく

大人たちはクロールする 
地平の中 かすかに沁みる夕暮れの甘さに
脱ぎ捨てたシャツの彩色の海から
子ども達の寝息が聞こえる

緑の蔦が痛みを連れて 子ども達を抱きとめていく
大人は交わっていく ほどけかけた靴紐を気にしながら
原初の魚が揺らした緑の水面に
青い大人が降り注いでいる

緑の眠り 子ども達は真っ直ぐに空へ
青の循環さえ断ち切るパオパブの午睡で
彩色の海は緑に喰われて行く
青い大人は交わり続ける 緑に終わる循環の果てへ