選出作品

作品 - 20050928_189_565p

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ドアボーイ

  ケムリ

どこかの部屋であなたはシルクのドレスを試着してる
テーブルに咲いた花 灰の匂いがする
ビルディングはマネキンだらけ
窓を開けたら爆撃機がコールサインを出した

夜は清潔 どこを舐めても冷たい味
ドアノブに触れてはじけた真っ赤な輪廻
そっと燻らせた空爆警報
その始まりをずっと祈っている

ドアにはデタラメなネームプレート
片っ端から開けてたら 入れ違いの嘘つきが歩いていった
非常階段の隅で女の子が腐っている
屋上の鳥は飛びたてないまま石像になっていった

そっと火をつけて夜の底に消えていきたい
窓に映るのはいつだって誰かの顔
猿は着飾ったまま非常階段を走り抜けて
43階のドアは全て開け放たれている

真っ赤なリンゴが載った藤の籠に
羽根のない虫が集っている
腐り始めた鉄の柱に
爆撃の始まりを祈っている

伴奏者を忘れたピアノソロ
高まりながら解けていけたらいい
ドアボーイは口笛を吹きながら亡命する
あなたはドアを開けようとはしない

腐り始めた世界の隅で まだ開け放たれないドアを探して
想像を終わらす爆撃を待ちながら
未だあなたは想像の果てにいる
音が消えたら死んでしまえるといい