選出作品

作品 - 20050808_172_380p

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ホットケーキ

  ケムリ

月曜日の足取りに シーツに残った日曜日の残り香
四つ切りの太陽に八月の蜜をちょっと垂らして
誰もがネクタイを締めて歩き出す頃
柔らかいほこりの中クロールする

並木道を歩いていくイメージから
ずいぶん遠いところで眠ってた
鉢植えのサボテンに小さな花が咲いたから
ホットケーキミックスに悲しいニュースは聞かせたくないね

ミルクの柔らかさと指先が舐めた甘さ
フライパンの上で陽炎が踊ってる
新聞の折り目から苦い味が立ち昇って
飛行機が落ちるってみんな囁いてた

明日は晴れるって聞いたのに 誰も信じないんだね
立ち上がる気泡の数だけ悲しいニュースはあるって
フライ返しでひっくりかえしたら
香ばしい世界に八月の蜜を

四つ切りの幸せに八月の蜜を垂らして
三枚重ねの朝日にナイフを入れて齧ろう
オレンジジュースにカンパリ垂らして
朝のニュースさえ愛せる八月のホットケーキ

さよならを手首に巻いて歩くひとの群れが
街並みに鳥の声を響かせて
硝子窓はもう眠気を忘れてしまった
蝉はまだ眠ってるのに 蝉はまだ眠ってるよ

まばたきするくらい長い季節に
柔らかな喧騒が世界を愛しくさせた
焼きたてのホットケーキ 四つ切の太陽に八月を添えて
聞こえる寝息くらい街並みを優しくさせた