夏は夏になるのをやめようとする
蝉が蝉の音をどこかへ置き去りにしたのか
足元から広まってゆく冬は答えた
ぼくの中の雪を降らす雪のせいだろうと
陽にけむる
あの真昼の月に触れたい
空と空のあいだに立ちつくしているのは
氷の鳥の群れ
背後をとなりを目の前を
悲しく溶けてゆく
川になり雨になり水になったひとは教えてくれた
地図に載らない海があると
泳いでも泳いでもたどりつかない
永遠と一日の地平線
そこからぼくはまだ許されないのだろう
夏のない氷塊のようにこの夜の果てで
選出作品
作品 - 20050802_101_367p
- [佳] 氷塊 - 丘 光平 (2005-08)
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氷塊
丘 光平