少し古いジャズの音 甘ったるいピース
転がる海月と音のない街 街路樹に縛り付けられた三日月
青い夜に鼠が鳴いてる 階段を昇る歌声
香水の匂いがするステンドグラス 林檎の入った紙袋
西日の丘に落っこちた爆撃機から
タンポポの種が飛び散って 夜の街に花開いた
浮遊する言葉は二十五時の鐘に寄り添って
千鳥足の魂は旋回する 星空に放つショットガン
気まぐれ四行詩 四言絶句で言葉は死んでく
賛美歌の降り注ぐ街で鼠が鳴いてる
階段に座り込んだ子どもは 星空の向こうの悲しい大人のために
カクテルグラスに十円玉をたくさん入れてる
世界は三人連れの女の子でいっぱいなんだ
猫を連れて歩いて行こう みんな幸せだったふり
音楽と酔っ払いの世界を探してる
あとはもう無くていい
ドレッドヘアに指先からませて笑おう
女の子の足首にはいつもコウモリの影がある
ただただ言葉を紡ごう 意味なんて無くていい
生むために殺して 殺すために生もう
十字交差点の真ん中から人々は羽化していく
鼠は屋上に昇って力尽きる ヒマワリの種をポケットに入れたまま
セックスを覚えたての高校生みたいに 覚えたての英単語撒き散らして笑おう
伸ばした手は空を掴むポージング 高層ビル群に降り注ぐ燐粉
もう言葉でさえなくていい 十代の性欲みたいに撒き散らそう
誰もが飛び去る時ちょっと悲しい顔をした
街はオーガズムを迎えてる 律動にあわせて腰を振るんだ
屋上で乾いていく鼠のために(望んでいいなら幸せなあの子のために)
ピアノソロが終わらない 苦しみに似た絶頂
溶解した言葉が流れ込んで来る ぬるい夜風に鼠は砕けて行く
そして誰もが微細な粒子を吸い込むように歌った
同じシャツを着て手を繋ごう 言葉は孤独じゃない
選出作品
作品 - 20050711_813_312p
- [佳] Blue bossa - ケムリ (2005-07)
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Blue bossa
ケムリ