きっとなにかを置き忘れた気がして
まだそこにあるかもしれないと
砂浜へ
砂浜に
白日の私がいくつも焼きついている
焼きついたままのそれらを踏み越え
探して諦めてまた探して
紺青の岩陰はるか
ぼんやりと赤らむ時と空の境界
あちら側の砂浜で
だれかの気配が目を細めている
そのひとの背なは鮮やかに透け
その透けた背なの向こうへ
私の知らない海が広がってゆき
ふと
一握りの砂をつかみ指し示すと
夕映えと砂音の間にそのひとは消え
低温な潮騒とともに
もう二度と聞くことのない息遣いが
すこし遅れて私を通り抜け
影と風の間で私は
ただ 頷くよりなかった
選出作品
作品 - 20050629_733_288p
- [佳] 砂浜 - 丘 光平 (2005-06)
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砂浜
丘 光平