選出作品

作品 - 20050621_674_278p

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静物 ― nature morte ―

  丘 光平

   
  たとえば
  六月の深夜の片隅
  大皿に横たわる果実の類
  あざやかな
  月光に磨きをかけられて
  彼らはつぎつぎと覚醒する
  それぞれ互いに
  噛みつき足りないのか 
  新たな交配に燃えつきるか
  飼い放たれた歌声は
  惜しみなく部屋中を駆け巡る
  ただ
  部屋の黒い中枢で
  さようならは一糸乱れず
  無造作に
  壁の磔となっていた
  白いブラウスの袖がすこし
  焦げている