電子の気配に
目覚め
点滅する記憶を再生する
あれは 5月だったね
細く開けた小さな窓から
ふたりして夕暮れを眺めながら
またこの季節が巡ってくるといい、と
小声で話した
西風が滑り込んできて肩のあたりを撫でていった
ひかりが白く溶けていて
そういえば、と
ノート
夏になれば開けるはずだったノートのことを
思い出した
少し 君は笑っていて
でも
冷たい夏がはじまってしまった
しまいこんだ抽斗の鍵をなくしたんだ
初夏の光に
花は枯れ
果実は熟期を待たずに落下する
鳥たちは行き先を見失い
空はいつまでもいつまでも碧を映し続けた
感情を捨てて
感情を捨てて
ただ
綴る指
金属のあじがする
灰色の風景は
ゆっくりとフリーズし
切片と化し ゆるやかに
崩壊
する
選出作品
作品 - 20050530_464_248p
- [佳] リロード - 紫野 (2005-05)
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紫野