選出作品

作品 - 20050520_364_231p

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音のない旅

  佐藤yuupopic

病院ゆこう、なんて
ゆわないで
わたし、病気じゃない
なンも見えなくなるつまんないだるい薬、
もう、
飲みたくない

見せたいとは思わない
あなたに
この景色、
たぶん、きっと、分け合えないと、
思う、から

気が散るのと、違うの
視点、
乗り移って、瞬間、
無音、
それから
何処までも、旅
また、ゆくの
あなたの顔ばっか、見てらんなくなる
ごめんね

急上昇
すっごい高いとこまで、
鳥と違うトび方
ビュん、と
越えて、
タワーの天辺まで、

高層作業員青年のアタマん中、銀色、ベビーピンク、かなりロマンチック、
高架くぐって
一番ホーム、電車、パンタグラフ、ダイヤ型、ごと通過
喫茶店、
紅茶にほどける角砂糖の、泡、
は、金色
目抜き通り
誰の、か、わかんない
肩越し
褪せたグリン
バス、のタイヤ、
水たまり、踏み越えて、跳ねる、飛沫
路地、
誰かの庭、
蓮の葉にでっかいしずく、
きらきらり、
再上昇、

俯瞰
開発跡地
ビルの欠片
更地に落ちる、影
乾いた風、
砂埃
わたし、ずっと昔の
今日
生まれたの、て
不意に、
思い出す
途端、

急降下、

二階の窓、
五センチの
隙間
から、滑り込む
柔軟剤、かおる、シーツの皺に、
光みたく
ふんわり
着地
ああ、
意識
やっと、
あなたの指先に、
ゆうべのチョコミントアイス
味の、くちびるに、
ただいま
も、いちど
声に出さず、ちっちゃく、
ただいま

わたしの、こ、ゆうとこ、きらい、だったら、
全部、きらい、なのと
いっしょ

そんなかなしい顔
よけい
かなしくなるから
しないで、
なおんないし
なおす気ないの
どうしていいか、わかんない、
ごめんね