選出作品

作品 - 20050517_339_223p

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合い席の女

  丘 光平

   その
   無意味な手は
   女の無意味な口へ
   もはや
   名前のない
   魚のようなものを放りこむ
   その魚のようなものには表面が見当たらない
   それでも
   表面のないものは止まることを知らないのだ
   なるほど
   はっきりとした形ではないけれども
   女のなかで
   いろいろなものになりながら
   暗がりの細道に押し合いへし合い
   あの
   いたっん落ちてしまえば最期の
   深い
   井戸へ

   ああ、
   影を取りもどす他になにがあるだろうか
   彼女はいま
   うっすらと
   笑う