選出作品

作品 - 20050428_210_201p

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マクドナルドは休日

  一条

娘をつれて、休日、マクドナルドに行くことが、多くなった。おれは、どうにも苦手なのだが、娘の希望を最優先するのが、親の務めだろう。と、勝手に思った、娘は、ハッピーセットを、おれは、なんでもいいから、適当に、メニューで目に付いたセットを、頼んだ。愛想のいい店員は、笑顔で、おれを見てくる、おれは見ない。その、輝きのあふれた笑顔は、どこで覚えたのだろう。と、待つことほんの数分、ふたりのセットが用意された。ついでに、空いているテーブルに誘導された、が、ちょっと窮屈、しかも、隣の若いカップルは、いやな感じだった。足を組んでいる、女のパンツが、見えそうで見えない。娘は、バーガーを、ぱくつく。見えそうで見えない、娘は、ぱくつく。男は、どうやら、別れ話を、女に切り出された様子。男は、半泣きで、バーガーを、ぱくつく。娘は、ぱくつく。おれも、ついでに、ぱくつく。女は、男を残し、店を、出て行った。結局、見えそうで見えなかった。今、おれの隣で、一組の男と女が、別れた。と、娘は、おれを、ちらと見る。そして、最後に、ぱくついた。その、娘の仕草が、キュートだ。おれは、馬鹿だ。おれは、結局、何も、見なかった。見えそうで見えなかった。女が、出て行った後の、休日のマクドナルドの店内は、少し混んでいた。おれと、男は、残りのバーガーを、残りのバーガーを、残りのバーガーを。ぱくついた。娘には、見えたに違いない、残された男の悲しみと、残される男の悲しみの、両方が。娘は、それも、ぱくついた。おれは、平日のマクドナルドのことを、少しも知らない。