曇り空、雲の行方、煙る世界、窓に指をあてる。意味のない 形 と 文字。
ぱしゃぱしゃと打ちつける 音、流線形を描く水滴。眼球の動き。
すれ違う電車の速度 と 交差する 視点。無言のサイン。
色とりどりのパラソル 紫陽花が咲いた。
かたつむりを見つめる子供の時間は止まっている。
透明な室内は水槽のようで
赤い服を着た少女はスカートの裾を
ひらひら
ひらひら
金魚の残像がまぶたの裏に
水草のような観葉植物
濡れて 揺れて
揺れて 濡れて
静かな時間の空気。浄水器からコップへと注がれる 水、溢れる しずく。
ほとばしる、ほとばしる、光の粒。眩しそうにまばたき、せわしない睫毛のはばたき。
手に目があったのかと
身体中にあったのかと
こんなところにも
あんなところにも
ぐるぐるとしっぽを追いかける犬のしぐさ
で
回る
めまい、かすかな音が聴こえる。すべてに通じる耳の奥底から、何かを知らせるように。
頬を撫でる風の気配。誰もいない部屋で 深く息をする。
めまい、かすかな音が近づいてくる。美しい痙攣を奏でる楽器、それは四肢を震わせて。
全身は眼球に吸いこまれて
あるいは
眼球が全身に埋めこまれて
見つめる
雨は降り続いている。
選出作品
作品 - 20050425_198_196p
- [佳] 眼球体 - 藍露 (2005-04)
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眼球体
藍露