椅子が 倒れている
椅子は
なぜ倒れたのか僕は知らない
なぜ倒れたままなのかを僕は感じる
ただ
僕には椅子に触れるべき手がない
僕の手には重さがない
声が
聞こえてくる
僕の中へ
都市の
極寒から
極寒の
荒野から
荒野の
戦場から
その空へ
両手を突き伸ばす子供たちの枯れ木
この無数の枯れ木でさえ森と呼ぶ世界
まだ僕らがなんとか呼吸している世界
その焦点に
椅子が 倒れている
それは
主人を持たない椅子
倒れたままの椅子
ただ
僕には椅子に触れるべき手がない
僕の手には温度がない
選出作品
作品 - 20050425_197_195p
- [佳] 椅子 - 丘 光平 (2005-04)
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椅子
丘 光平