心地よい熱を持った幻に包まれて
穿った世界を鼻で笑った 素晴らしい風向きにラズベリーの匂い
熱病に吹く風 病交じりの歌声
檸檬の冷たさをイメージする昼下がり
三つ数えたら街は崩壊する
グレープフレーツフレーバーの煙草が打ち消したもの
びいどろの甘さが世界を優しくした
偏西風が強すぎて 凧揚げが出来ない子ども達
みんな玩具のピストルを持って走っていった
三十九℃の優しさを感じて
鼻孔の痛みが風を甘くした 跳ねた髪が空を近くした
街路樹が空を持ち上げてる 電線の網が雲を支えてる
額に落ちた葉が優しくて 世界は甘い匂いでほんのり冷たい
プレゼント持って家に帰る気持ちで
風景画に色を乗せる
きっとみんな窓をあけてる
窓枠についたあたたかい曇りくらい愛しい
きっと今日 熊たちは眠りから覚める
柔らかい冷たさ 甘い風の匂い 肺に落ちる優しい水滴
乾いた肺に吸い込む甘い冷たさ
きっと今 世界の家ではみんなシチューを煮てる
エプロンに落ちた水滴くらい世界は優しい
冷えた爪先で触れる頬とよく熟れたオレンジ
子ども達はみんな疲れて帰ってくる
眠りにつきたいほど世界は優しい
電柱の冷たさくらい心地よいものはなくて
このままずっと街に立っていたかった
手は赤く暖かくて 電柱の冷たさはどこかで覚えがある
すりおろした林檎のイメージ ほら世界は優しい
身体の重さが空気を軽くした 解け残った雪が優しく揺らした
三十九℃の優しさに流れて 熱い歌を吐き出した
揺れる意識は世界を着色して
檸檬の冷たさをイメージさせる
口に含むびいどろの空想 甘くて冷たい世界
冷たい指先が頬を撫でる思い出
選出作品
作品 - 20050323_909_139p
- [優] 風景檸檬 - ケムリ (2005-03)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
風景檸檬
ケムリ