凛、と鳴って しゃんと立つ 炎にまみれた夏神楽
舞っている、村娘 星雲 渦状 静寂も破轟もすべて突き放して
折り重なった夜の彩度をひとつにつらぬく彼女の咆哮、流星群
線で揺らして 地で壊す 影絵 反響 炎上炎舞
村祭
朝をうばって
乱雑に破滅する
彼女、輪郭 薄紅 体躯 中空に触れる 手でえがく
燐光 線描 夜に裂く花 呼んでいるのか殺しているのか
ただ待っている だれもが 彼女、ただ舞っている
彼女、幻想の幼生 妖精 光源がつよく明滅している それから
億千の願いのなかでかすりついた傷痕 彼女、痛苦 花束 それから
彼女、それから 花束 反響 光、はじけて、強くつぶって
古ぼけた冬
古ぼけた教室 なめらかな肌
あの子、云って かみさま
薄いまなざし
それ、誰に言って そこには誰もいないよ 誰もいないよそこには
窓枠、すすけた空 古ぼけた校庭
そこにはだれもいない
燈炎、吹きあがって 膨張する影
獣の息吹に溶けた天幕 焦熱でふれる鼓膜 崩落、
彼女 同化している そのすべてを 統べて たとえば右手は大地を切る風
活きている いきている 吐音 強打、連続 咆哮再度 呼んではいない 殺すばかりで
形骸だけの音楽に、息をあわせて旋回点 塔炎、吹きあげて ひかりが囁く脈動しろと
なまえをなくして怒声になれと 彼女、融解、こころの氾濫 築かれた夢が破鏡していく
あらゆる星が彼らの限りに呼応をはじめる きづかれた夢を消すそのために
振動 邂逅 神楽の強打は音圧を、途方もないほど上げていくだけ 閃熱、包囲 夜にとどめて
朝をころせと吐く、声、とぎれて 流海にただよう季節のなかで 夏だけゆるして あとはつぶして
彼女、いつか死ぬよ
あの子
目を伏せて
白い呼吸が 幼い
うたごえ
あの子
薄紅なんかつけたこともないのに
似合いすぎて 夏神楽 彼女、凛と鳴って
音声 破裂 かえろう 還ろう きみはそこにいないよ それは終わらないよ
疲れたね すこし暑くて なくしていいから 壊してかまわないよ
茫洋 段階が散った海は遠く ざわめいているのは生物だけではなかった
剥奪された、朝 その夢 あの子が軋む海岸線は 残り香たちの暮れる場所
あの子
いつか死ぬよ たとえば右手
なめらかな肌 やさしい呼吸 ひかり
ゆるされた瞳、まなざしを
ふりほどいて
しゃんと立つ あの子 深い呼吸 白く ひびきつづけた熱源は
浅く、 りんとなって冷たい
選出作品
作品 - 20050312_753_120p
- [佳] かぐら - 守り手 (2005-03)
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かぐら
守り手