選出作品

作品 - 20050222_555_85p

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ふっとう

  一条

音が水にひたされている
どこからながれてきた水なのか
こんなところであぶくのはれつにすいこまれてしまった
こんなところでてのひらにすくわれてしまった
だれのてのひらにすくわれたのか
すくわれたぼくはだれなのか
しょうたいのわからない
水がながれ
音がきえ
てのひらのすくうぼくがきえた
冬のしっぽが
春らしく
ちぎれながら
そのすべてがあっけなくうもれてしまった音にすべてのあっけなさにあぶくがたった
つぎのあぶくがたった
ふっとうですかと声がきこえる
どうにもならなかったぼくがふっとうをこばみつづけるどうにもならなかったぼくを
ふっとうさせるのですかと
そういう音が水にひたされている