第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (5/57)
  


玉を持たせて、古墳の上にある神社に行くことを許した。
 このとき吉野さん夫妻はふもとの鳥居の外で待っていたが、その
場所から神社までの石段は視界が開けており、距離もたかだか10
メートル足らずである。そして、吉野さん夫婦は、たしかに美咲ち
ゃんが頂上に上ったのを確認している。
 五分ほどたった後、戻ってこない美咲ちゃんを心配した義弘さん
は、美咲ちゃんを探して頂上への石段を登った。大人の足でなら急
ぎ足で10秒といったところだろうか。頂上の社殿がある広場につ
いた義弘さんは美咲ちゃんを探したが、そこには美咲ちゃんの姿は
なかった。広場は直径約15メートルの円形で、社殿のほかには何
もない。義弘さんは美咲ちゃんの名前を何度か呼んでみたが、返事
はなかった。
 頂上までの間には、古墳を周回する周遊路があり、頂上からぐる
りと見おろせたが、そこにも人の姿や気配はなかったという。
 不安に駆られた義弘さんだったが、石段を使わずに中腹の周遊路
に下りることも不可能ではないため、入れ違いになった可能性を考
えていったん妻の美幸さんの待つ鳥居に戻ってみることにした。
 その途中で一応周遊路をぐるりと一周し、どこかで転んで怪我を

第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道