第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (31/57)
  


 川上さんは、もう終りじゃ、殺したんはわしじゃ、殺したんはわ
しじゃ、言うて随分参っとったけえ、もう気にしんさんな言うてと
りあえず寝かしたんじゃけど、一晩たってみたらもうおらんように
なっとって皆なたまげてもうて、どこに行ったんじゃろういうて皆
なで探したら、裏の井戸に身を投げとったんじゃ。
 最初に見つけたんは駐在さんじゃった思うけど、そりゃあもうが
たがた震えて、わしゃあこがあな惨い死体は見たことがない言うて
近づきもせんけえ、吉田さんがそがいなことでどうするんじゃ言う
て代わりに見に行きんさったんじゃけえど、これも飛んで帰ってき
て、川上さんはどうせもうだめじゃ、あがあなもん見んほうがええ
言うて。何を見たんじゃいうたら、真っ黒い人が底におって、それ
が川上さんの曲がった首をひねくり回して、その首とわしゃあ目が
合うたんじゃ、言うて。
 そがあ言うても誰も信じられんし、何より引き上げんことにはや
れんけえ、皆なで連れ立って川上さんを引き上げに行ったんよ。ほ
したらこれがたまげたことにほんまなんよ。井戸の底に真っ黒い人
影が座りこんどって、川上さんの首を捻り上げて、その目が恨めし
そうにこっちを見おるんじゃけえ。皆な飛び上がって逃げて、あり

第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道