第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (22/57)
  


に使うとる板を取り出して、卓袱台の上に置かれました。板には真
っ赤な鳥居と、はいといいえ、あとはあいうえおかきくけこいう平
仮名、それに0から9までの数字、それらが彫りこまれとってでし
て、そこに川上さんがいつも使うとる、カコイサマいうやつを、ご
存知ですか、それを置かれてですね、川上さんと旦那さんと美幸さ
んと、三人とでそれに指を添えられて、ぜってえ指を離さんといて
ください言うて川上さんが説明しておられました。私は川上さんの
言うちゃることを帳面に記録する係ですけえ、その間ずっと鉛筆を
もって横で待機しとったんですが、そのうちに川上さんが言われま
した。たいへん長うお待たせしました。お父さん、お母さん、いま
から美幸ちゃんを降ろしますけえ、美咲ちゃんのことを心でじっと
念じてください。できるだけ楽しいことを思い出して、美咲ちゃん
の顔をはっきりと心に映してください、いうて。ほうで川上さんは
美咲ちゃんに呼びかけるような言葉を呟き始めて、美咲ちゃん、美
咲ちゃん、言うて、なんとも居た堪れん気持ちになったのをよう覚
えてます。
 あのカコイサマいうんは不思議なもんで、あれはほんまにひとり
でに動きおるんです。私も実際信じとらんかったですけど、ありゃ

第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道