第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (23/57)
  


あそうとしか思えんのです。じゃけ川上さんに聞いてみたことがあ
るんですね、一度。なしてありゃああなあなことになるんかいうて。
ほしたら川上さんは、あれは入り口なんじゃ言うちゃられました。
人の魂いうんは寂しゅうて仕方ないけ、あったけえところを見つけ
て入りてえんじゃ、あのカコイサマにはお地蔵さんがおられて、そ
れに誘われてするすると魂が入られるんじゃ言うて。そういうのは
魂のほうも頭で考えとるんじゃのうて、電燈に蛾が集まるみたいな、
自然なもんらしいです。
 川上さんが美咲ちゃん美咲ちゃん言うて呼びかけ始めてから五分
くらいでしょうか、突然旦那さんと美幸さんが身体をびくっと震わ
して、えろう何かに驚かれたんは、カコイサマが動かれたんじゃ思
います。川上さんはふうっと長え息をひとつ吐かれて、美咲ちゃん
がきとられますよ、て言われました。そっから部屋の空気が全然違
うたんは、ただ横に座っとっただけの私にもはっきり分かりました。
どういうんですかね、部屋の温度は寒いのに、身体は妙に暑苦しゅ
うて汗が滲んでくるような、いうんですか。蝋燭の炎の上のところ
だけが長あく横になびいて、気持ち悪かったんを覚えとります。
 質問は、最初ん頃は川上さんも美咲ちゃんに交霊のやり方を教え

第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道