けえ、これから支度したらちょうどええ頃合いじゃあいうてお話を
したんを覚えとります。
美幸さんのお宅についてから、まず簡単に挨拶を済ませました。
家ん中は真っ暗でした。饐えたような臭いがしとって、旦那さんは
もう随分と参っとってでしたけど、なんとか気を張っておられたよ
うでした。美幸さんのほうは旦那さんと違ってもう限界じゃいう感
じで、ほとんど喋りもせんで、目もうつろで。
私と川上さんは二階の美咲ちゃんの部屋に案内されて、部屋に入
ると川上さんが部屋の中を見て回られて、美咲ちゃんの大切なもの、
なるべく長う使うとるものをひとつ貸してください言うちゃったん
です。そしたら美幸さんが、美咲が大切にしているぬいぐるみです
言うて、それを川上さんに渡されて、それから私と川上さんで交霊
会の支度を始めました。
まず、部屋の中央に下から卓袱台を運びました。その上に持って
きた蝋燭を立てて、私らみんなでお神酒をいただいて、塩をまいて、
川上さんが短いお経みたいなのを唱えられてから、お父さんお母さ
んお待たせしました、いまから美咲ちゃんをこの部屋に呼びます、
言われました。川上さんは持ってきた包みん中から、魂を降ろすん