ほんまはこんなこと頼める義理じゃあないんですが、今日この話
をするんは、多少の罪滅ぼしと、亡うなったひとの供養になればと
思うとるんです。美幸さんには特にひでえことをした思うとるんで、
できればほんまのことを誰かに伝えてあげてほしい思います。それ
ではどうか宜しゅうお願いします。
あれがあったんは一九九二年の、八月の十四日のことじゃった思
います。大きい忌み日を避けるんは邪魔が入らんようことじゃ言う
とりましたけえ確かじゃ思います。場所は美幸さんとこの二階の子
供部屋で、時間は五時を少しまわっとったでしょうか。
私は世話人いうことで、本来なら美幸さんと川上さんの間に入ら
れとったフクさんが来ればええんですけど、あの人は満足に読み書
きができんのんで、代わりに私に行っちゃくれんかいうことになっ
て、私も川上さんとは知らん間柄じゃあなかったこともあって、特
になんのあれもなく、旅行みてえなもんじゃ言われてつい受けてし
もうたんです。まさかあがあなことになるとは思わんで。
広島の駅から新幹線に乗って新大阪についたあと国鉄に乗り継い
で、駅からタクシーを呼んでもろうとったのに乗り込んで、美幸さ
んとこのお宅へ伺うたんです。ついたんはまだ日が高いうちでした