ょうど盆の半ばである八月十四日に(この日時は川上側からの提案
であったと言われる)吉野家で交霊会は行われた。
川上喜代子は岡山県和気郡の生まれとなっているが、これは厳密
には正しくない。喜代子は物心付くか付かないかの頃に身売りされ、
和気の川上家に引き取られた。
喜代子は七つになるまで愚鈍で感情に乏しい白痴のような子であっ
たが、この歳を境に大層利発になり家族を驚かせた。その一方で白
昼に神懸りに陥るようになり、しばしば家族や村民の失せ物を見つ
けて見せ、怪我や病気などの凶事を言い当てた。
この川上と結城は遠縁にあたるが、両家には親密な交流があった。
川上の家が近隣の家と果樹園の二重譲渡で揉めたときに、間に入っ
て収めたのが結城であった。このことが縁で交流を深めた両家であ
ったが、今度は結城の家に問題が持ち上がる。洋酒の工場を建てる
のに土地と資金を出さないかと持ちかける山師が頻繁に家に出入り
し、実質的な意味での家長である祖父の勘助は首を縦に振る寸前で
あったのだ。この時喜代子は持ち前の神通力を発揮し、結城の家の
没落を予言、返事を一週間保留させたがその間に件の山師は別件で
の詐欺容疑で警察に逮捕され、結城の家は危うく難を逃れたという