第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (11/57)
  


によるものだとすれば、車を横付けできるこの場所は犯人にとって
好都合だったと言えるが、失踪当時は鳥居の前に母親の美幸さんが
ずっと立っており、不審な車や人影は見ていないという。古墳から
美咲ちゃんが出て行くには正面の鳥居を通らざるを得ないことを考
えれば、車による連れ去りの可能性は低いだろう。
なお、古墳の裏手は入り組んだ住宅地になっていて、細い生活道路
に抜ける路地が東西に二本あるが、こちら側は県道側の道路よりも
主婦や小学生などの通行人が多く、美咲ちゃんがどうにかして濠を
越えられたと仮定しても、やはりこちらからどこかに出て行った可
能性は低いように思われる。

御願塚古墳には、1991年頃から浮浪者が住んでいたという噂が
ある。
だが、実際に古墳に住んでいたのかどうか、ということに関しては
疑問の余地が残る。実際の目撃証言が多数あることから、御願塚・
稲野近辺に浮浪者がいたことは確かだが、実際に寝起きしていた場
所は別にあったと思われる。古墳には雨風をしのげる場所がないか
らだ。

第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道