◇ No.344 , '12/12/01 07:13:41 作成

6433 : あなたにパイを投げる人たち  debaser '12/10/24 18:49:11 *1



とてつもなく長い椅子がさらにとてつもなく伸ばされようとしている
ホームベーカリーでこんがり焼け上がったフランスパンのまえで
彼女が少しもバターを使おうとしないわけはエゼキエル書25章17節の裏っかわに書いている
テーブルには果肉がたっぷり入ったイチゴジャム
その横にすっかりさめてしまったカボチャのスープ
主人の帰りを待つ美しい妻は、股間あたりをういんのごとくういんして真剣に悶えている


神:あなた投げたパイはこの金のパイ、それともこの銀のパイ?
私:はい、そのエンゼルパイです
神:あなた突然、神に話し掛けられてもちとも動揺しない、見込みちょとあるね
私:失礼ですがどちらの国の?
神:インドの山奥のほ
私:日本語お上手ですね
神:ありがと、日本来て10年だもんな
私:なんでまた?
神:アメリカに大学行くか日本に大学するか迷てんけど、日本来たもんな
私:え、何歳の時に来たんですか?
神:18、ハイスクル出てすぐ
私:なんでまた日本に
神:わたし国、そのときどきで日本人気あったな
私:ほー、それでどちらの学校に
神:おいたの立命館
私:大分ですか
神:あなたおいた知てるのか、ぺぷ温泉あるもんな
私:行ったことはないですけど、有名ですね
神:わたし温泉のバイトしてた、たちばな旅館、べぷの
私:なにやってたんですか
神:風呂場掃除だもんな
私:大変そうな仕事ですね
神:めちゃ大変やん、めちゃ朝はやいだもんな
私:日本に来たときは、日本語はどの程度?
神:いっこもやん、こにちは、と、ぼてぼてでんな、くらい
私:いろんな方言が混じっているような気がするんですが
神:日本のともだち、たくさん作たもんな
私:大分の大学でですか
神:うん、それと、たちばな
私:あ、旅館の
神:そうな、たちばな、みんなやさしかたな
私:家族経営ですね
神:そうな、3人姉妹、みんなめちゃ美人
私:おー
神:わたしの日本での初恋やもんな、ちょじょのほ
私:長女ですね
神:ちょじょ、めちゃ美人やもんな
私:次女は?
神:じじょ、めちゃ美人やもんな
私:じゃ、次女でもいいじゃないですか
神:ちょじょのほが、ちょっと美人やもんな
私:三女は?
神:さじょは、めちゃ美人やもんな
私:じゃ、三女でもいいじゃないですか
神:ぶちゃけ、どれでもよかたな
私:告白したんですか?
神:したもんな、おかみさんに
私:え、なんでまた女将さんに
神:ぶちゃけ、どれでもよかたもんな
私:それで、どうなったんですか
神:そっこでOKでたもんな
私:え、付き合ったの?
神:これは不倫だもんな
私:ばれなかったんですか?
神:付きあて、次の日にそっこでばれたもんな
私:早すぎるでしょ
神:わたしそっこでおいた逃げたもんな
私:学校は?
神:そのときどきでちゅたいしたもんな
私:それで
神:東京きた
私:東京ですか
神:なにも知らないのに、システムエンジニアしたもんな
私:働いたんですね
神:うん、めちゃちっこい会社に、たちばな企画
私:また、たちばなですか?
神:ぐぜんやろ、べぷのたちばなとはかんけなかったやろ
私:そこではちゃんと働いてたんですか
神:しゃちょのひしょ、めちゃ美人やもんな
私:あれ、もしかして
神:そっこでOKやもんな
私:付き合ったんですね
神:付き合って、そっこでばれたもんな
私:逃げた、と
神:わたしそのときどきでそっこだたもんな
私:女癖悪すぎるでしょ
神:ぶちゃけ
私:どれでもいいんでしょ
神:めちゃ美人やもんな
私:女の話以外になにかあります?
神:こないだ、きょとに行てきたもんな、仕事で
私:仕事してるんですね
神:しつこくシステムエンジニアやてるもんな
私:というか神様なんでしょ
神:まぎれないもんな
私:仕事しなくていいでしょ
神:仕事すきなめんは確かにあるな
私:なんか願いとか叶えてくださいよ
神:あなたはどな願い持てる?
私:そうですね、恋人が欲しいです
神:どな、めちゃ美人の?
私:容姿のこだわりはないです
神:そっこでOKやもんな
私:いや、意味わからないです
神:ふつのほやもんな
私:わからないけど、たぶんそれでいいです
神:じゃ、明日家に待てて、じゅしょをこの紙に書いて
私:ありがとうございます
神:楽しみがいこにこふえたもんな


わたしは、紙に嘘の住所を書いたので
本当に次の日にそのふつのほの女性が来たのかどうかわからない
そんなことより、妻がずっと股間をういんういんしてる
気持ちいいのかどうか知らないけど、あれ、なんとかならへんかなと
思いながら、腹式呼吸の夜行虫が空を飛んでった

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121024_185_6433p


6455 : それがすべてじゃないさ。  菊西夕座 '12/11/06 00:13:04


鷺山動物公園のてっぺんに「ゴリラ」と銘うたれた檻がある
(空には星屑、ニヒリスター。)
外縁に堀をめぐらせ灌木を張り渡し数本の石柱を突きたてて芝を植えた箱庭の
(地には砕石、ニヒリストーン。)
野ざらしにされた角切りのコンクリートボックス内をのぞきこめば
自販機サイズのでくの坊が黒い毛むくじゃらで気だるくうずくまっている
(無言の宝石、ニヒリストパーズ。)
ロケットランチャーのような肥大化した腕をはちきれそうにもてあまし
ぶっとくいかつい短足を 片いっぽうは投げ出して もういっぽうを抱え込み
俺にいわせりゃ――「ゴリラ」だ?「檻ラ」だ。――「野獣」だ?「隷獣」だ。

階段を上って爬虫類館のまえにせり出す手狭なバルコンが雌「檻ラ」の観覧席
(夜空にまたたくニヒリスター。)
視界の中途にかかる蜘蛛の巣さえ気にしなければ絶好のビューポイントだった
(地には転がるニヒリストーン。)
まるで狙撃手にでもされたようなうしろめたい気持ちが兆すのを見逃すならば

「檻ラ」はガラス張りの電話ボックスにホモサピエンスが収まるすがたを連想させた
といってもそのボックスは横倒しにされ彼女は壁にもたれ片ひざを抱えこんでいる
手にもつのは緑色の受話器ではなく『藁にもすがる想い』の小さな藁くずだった
藁くずをピチャピチャ舐めながら彼女が通話している相手は上の空だろう
(たゆまぬ煌めきニヒリストパーズ。)

うつろな目が蜘蛛の巣越しにもうお前を見飽きたという単調なシグナルを投げかけてくる
(彼女と見合いしたのはこれが初めてなのに一瞥で俺を見限ったのか)
「檻ラ」の重く沈めた土手っ腹は爆弾を巻く殉教者のように悲壮さを帯びて硬くふくれあがっている
(首に巻きつくニヒリストール。)
箱庭に入るかわりに彼女が観衆からとりあげたのはゴリラそのものではなかったか?
(足を滑らすニヒルスロープ。)
あるいは「ゴリラ」という名の檻に入ることさえ彼女は拒絶しているのかもしれない
だからこそ檻の中に置かれた冷たいコンクリートの箱で二重に囚われてみせるのか?

ならばその腹が爆裂し「ゴリラ」という名の檻を高々と粉砕する日を夢見よう
(空にこぼれるニヒリスター。)
爆風は箱庭に張り渡された太い灌木を裂き石柱をなぎ倒し水のない堀をのり越えるだろう
(地には飛びちるニヒリストーン。)
強化ガラスを打ち砕き厚い胸をいからせバルコンに躍り上がり狙撃手をひねり潰すだろう
もう手の届かないところに消え失せた恋人の声を待って永遠に受話器をもちつづけ
その受話器をマイクロフォンに代えて美しい歌を痛切にうたう道化師もひねり潰すだろう
得意げに山を下りた人間はそのときまで野生の真性を「ゴリラ」で騙りつづけるにちがいない
(黙せる宝石、ニヒリストパーズ。)

「もしもし、あなたはもう安らかな天上に羽をのばして暮らしておりますか?」
「おかけになった電話番号は現在つかわれておりません」
胸をたたいて閉じこめた思い出をいっせいに呼び起こしてもあなたの声は響かない
いつまでこうして期待に輪をかけていれば途切れた糸がもういちど結ばれるのだろうか
荒れた湿地でいたずらにのびる瓶子草のような影をひきずったまま同じ世界をのぞき続け
ふたたび振り向く姿を射とめるためにあなたが視界をよぎる日を待ちこがれている
(ニヒリスター・・・ニヒリストーン・・・ニヒリストパーズ。)
鷺山動物公園のてっぺんに「我ら」と銘うたれた檻がある

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121106_388_6455p


6452 : 魔王  pa '12/11/05 13:08:33

おまえ、


そうだ、
そこで
そうやって

きいている、

おまえだ
そうだ、
わかっているのか、

おい、
なあ、いつまでそうやって
ひっこんで
いる
つもりなんだ、

なあ、

おまえ、
なまいきなこと、
いってくれる

どこまで
行ったら
この道の
はてがみえるかだと

この青二才が

じぶんの尻でも
ながめているがいい

おまえよ、

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121105_376_6452p


6458 : lace  泪 '12/11/06 08:23:13 *3

クロッシュレース
かぎ針で丁寧に糸を編み込んでいく
しゅるするしゅ
細い糸の束がふるふると震える
宝石の様に広がる作られた模様
擦れた指先は何度も失敗した結果汚れていて
汗で上手く滑ってはくれない
不意に思い出した言葉に手先が震えて

くるくるくるっと
レースと一緒に震える思考
私、今きっと此処にはいないわ

外では冷たい雨が降っていて
私の足は氷の様に冷え切っている
赤く染まった指先に
細い糸が繋がって
誰かが私を操っているみたい

感覚が無いの

ぴゅうううって
びぃいいいんって
引っ張られるわ
苦しい
ほらまた私其処にはいない

*

遊ぶ遊ぶ遊ぶ
クロッシュレース

つま先立ちしてくるくる回って
びぃいいいんと引っ張られたら
くるっとお辞儀
お天道様が上から悪いこと見張っているけれど
悪戯には見向きもしてくれないわ
こんにちはこんにちはこんにちはおはよう
いつの間にかあの沼の横の木の根でつま先を抉いて痛いような気がしているけれど
ぽかりとあいた空間が大きすぎてそんなもの気にならない

*

お天道様こんにちはおはよう
私、ここの綻び見つけました

お天道様こんにちはおはよう
お願いお願い私の声を聞いてください

お天道様こんにちはおはよう
きっとお天道様は下手くそなのね

宝石の様な糸の模様が時折綻んでいるもの

*

ほら私其処にはいない

時折呼ばれる小さな声に

*転々と続く私の血のあとがまるで赤い糸のようです
抉いたつま先が貴方の針糸の先に繋がっているのです
お天道様は気付いていらっしゃらないのなら
それでも全く構いません
汗で滑ったレースの宝石がちょっとぐらい汚れてしまった所で
お天道様には関係ありません


こんにちはおはよう

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121106_397_6458p


6454 : 太陽の粒が降り  箱舟 '12/11/06 00:12:39

彼女の足は遠い所にある
逃げ水の向こう
砂浜に 
へこんだ お尻の跡を残し
青の轟音に追い立てられるように
海に入ってゆく
砂の衣は流れ
彼女の耳だけが泳ぎ 聞きとる
海の信号を

底でときめいている
剥き出しの音
血管の河を泳ぎ
波打ち
時を刻み過ぎゆく
よせて返す波
音
胸の上に手を置けば
跳ねる魚
の上を飛ぶ鳥
甲板では船長を呼ぶ声
時に時化 天地無用
人を編み込み渦巻き
漂流する空にまで響いて

時に破敗(やれ) 沈みゆく街 街路 歩いていた
沈み行く樹々、草花 夏の日の風 揺らめき煌めき 悪しき日々 希望も  
笑っている あなたが振り撒く 時に高く 見えるもの全て

行き場所が無いのは淋しいことだ
海へ
過ぎ去った時のそれぞれに寄せる波があった
かつて遊んだ砂浜は狭く浸食されてしまい
満潮時には水没してしまうのだが
それでもいま太陽に蒸されて
磯臭いここで貝殻などもてあそぶ
かつて曲線の隆起に沿って歩いた
空と地の間で
寝そべったあの人の内海を漂流した
過去から現在まで流れついたもの全てを積み上げ
湿った流木を種に燃やしたい欲望は
放り投げられた午後に
差し出された白い手にすがりつきたいだけなのだ
幾度となく黝い波が噛みつき砕けた
苦く噛みしめた潮の味で言葉は封じられた
時に 精妙に黄昏て朝には平らなるこの地
太陽はあらゆる境界線から昇る

オリーブの茂みから風狂な獣が顔をだす
彼女は彼を受け入れるだろう
窓は開け放たれ
彼は自由に出入りし
傷口を舐め合い罪のない時を過ごす
緑の海水に満たされた部屋に 
太陽の粒が降り
彼女の境界を乗り越えてゆく

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121106_387_6454p


6457 : いじわる  666 '12/11/06 04:07:41 *1

稲刈りを終えた馬畔(まぐろ)道は
いくつかの軒と差し向かいながら
塩の道順を遥かに望んで
静かに拓けていきます
曲がりくねったセンターラインのない
道幅を左寄りに運転すれば
ハンドルを切った目前に一羽のカラスが
急いで離したアクセルに遅れて
へらへらと脇にどくカラス
大きく開けた嘴に
デカイ獲物を咥えるように

太陽が木々に宿り
騒がしく色めく季節を挟んで
天から落ちた石粒大を
避けてやろうか、潰してやろうか
三度目のカラスと相対をして
舞い降りた先のススキに紛れる
黒いアイツの顔色を窺う

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121106_393_6457p


6460 : ある年表の一節より  原 敬 '12/11/08 21:14:06 *4

歩くたびに
骨が鳴る

いつも
タイプライターと骨はひとそろいで
靴ひものように
懐中時計とともに収まっている

獅子の小便と血で
コートは透明になって何年にもなる

いつからだろうか
こうして
身を案じて生きるようになったのは

欲しいものは
elementだって手に入れた

ママの喜ぶ顔が見たかった
大物だぞって認められたかったんだ

みんなだってそうだろ?

満足いかなかったら癇癪おこすまえに
全部奪ってしまえばいい

水のなかに顔を押しつけて
始末すれば
なんだって黙っちまう

はじめての殺しは
あっという間に終わった

次の
殺しまで
あいつが死んでるのか
とても
信じられなくて
毎週日曜日になると
あいつの
墓のまえに立つのが
日課だった

チェロの苗木より
幼かったころ
ママから
ブレンターノの髭は
あの島に似ているわね
ってささやかれた
墓場だった

その頃
ママは
とてもHotで
パパのことを
英雄リビアのようにたたえてたっけ

でもね
パパは
船のなかで梅毒になって
病院でくたばったんだよママ

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121108_479_6460p


6461 : foot print  玄こう '12/11/09 02:42:28  [URL]


きみはいつからそうだったのだろうか

 あま
  くも  たじろい
 こ
  ろ 
   こ  

 ラのかぜ
 

きしむ午後 
ほぼほぼ ちろつく   
きみめはとおい き おくの
 おくて はくは ちらつく
かたみのあやめが
タナカの社にさきんみだれて
つち
ころ
もろ もろ
つち
くも 
たつ うろのちにとじ

 ラのかぜ
     
 こ
  ろ
   こ
    
かほる朧月
屈める西陽
かほの片鱗 
かが かが、 
軋む かが、
軋む かが、 

要人に書き留めた肢アシの先から抜きん出た生者、
世人の身請けをうれいうずめ、世人の血筋をうるわしくとどめ、
うろのうろの毛ひとつも遺さず矢筈にとどめ、的中 
道を射抜く矢の影から なま温かい風洞の気差し
奥の茂みの中の膠着した、精神の中の静寂の魂、
斜交いになだれ 滑る箏の支柱に 音素をとどめる


捨身の画の片隅のisomraの声
 白紙に裏書きされた 銘記された、名の一枚一枚の絵を 切り貼り
  形見にたむけ 家族に送り郵便さくらんらん 仲ん字はうつろい 



  フットプリント

ひとめもあしか ふくぬけがら 
ころがる砂地 盗む声 気流の汐
みとうのみとう 風のさえ  ささ   
もんじをなぶる 紙の一枚  ふるえ 
くじゅうくたに しゅう曲  かさね 
波打つ丘陵のひしめく野を  めくり 




   生得の、VOICE

詩はおとにたつ
詩はおとにきす
詩はそのうぶごえ
詩はうろのみたまに
詩は、わたしのそのこえに
きえていく、
こえていく
詩は音の無邪気さをかなで
よみがえらせ
よみかえす
くりかえされる
生得の、VOICE
その音義
よみかえす
、
はじまりは
りょうのひざ
そのさきに先立つ
みち 未開の地
あやとふみ
成る、音の
交互にひとつ、ひとつ
くりのべて
読み返す、くりかえす、
音の叶う−成る者のその
生きた活きた、行を
行体を、ひとつ、ひとつ 
ふるわせ、くりかえす
―地母の―聖なる―隠匿の
量なる文字のゆく礫は
こだましている
山川の谷間に響き
えたりかしこし
えたりかしこし
えたりかしこし
と
―山梨県かうらやむなき若き放蕩者の
前人未踏に立ち亡き骸が累々と横たわる
凡夫のたむれが、その雲間の顔がもれている 
かの花弁の桜が 先人の那の谷間に響いてる

   あぁあぁあぁあぁきみはきみは
   きみはいつからそうだったのか?
   そう呼ぶ問いかけにきみのきみの
   きみの返してくれる声は
   うろうろ耳元をかすめて
   
   声のするあやの色のあんよのちっちゃな
   小さな足音を筈筈とふりかえさせたれり

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121109_481_6461p


6440 : 我が暴走  ちーちゃん '12/10/29 00:18:36

我が暴走

瞑想 妄想 夢放送
真昼の照明がプツンと切れて
星の明かりができ物怪人の吹き出物のように
空を散らかしてしまった
にゅいん にゅいん
脳の膜の内側には鉄砲水が流れ込み
テーブルの上の饅頭星人の咳が何度もリピートしています
テレビではついさっき見終わったニュース番組が
五分後の再放送を始めております
ああ ブラウン管のRGBのノイズが
この目玉だけを宇宙空間に放ってしまう
遅れて大きく開いた歯と歯茎だけが
黒い羽で飛び回る虫歯菌を連れてぼうっと浮かび上がる
宇宙に飛び出した僕は
今のところ目と歯と歯茎だけで食べ物を探している
下を見ると歯と歯茎がある
上を見ると蛍光塗料をぶちまけた星の群れ
僕の目はどこにあるのだろう
僕の歯は目を探した
歯を凝らして
カミカミしていた
そしてぼくの歯が目をカミカミした所でCMに入る
五分前に見たCMだ
ニュースキャスターが笑い出す
爆発した真昼の照明が視界の全てを奪う
ドッキリです
赤いヘルメットの俺がブラウン管をハンマーで叩く
にゅいん にゅいん
脳味噌がはじき出した今回の結論はこうだ
宇宙はもの凄いスピードで収縮と膨張を繰り返している
光を超えた速度で繰り返し少しづつ遠くを目指す膨張は
最小である点の内側に向けても飛び出し膨張を繰り返す
毎回の膨張の点と点を捉えた繋がりが時計を示しているんだ
それならば何度も挨拶を繰り返していたあのうるさいニュースキャスター
彼が悪者で無いことが僕にはわかる
僕は点の捉える場所を間違えていたのだ
にゅいん にゅいん
でも 脳味噌がはじき出した今回の結論はこうだ
宇宙はゆっくりと大きくなって
でも 
ゆっくりと下降しもう完全に時間から離れている僕は
座り込んだ部屋の中で目と歯と歯茎を探していた
部屋の床の板の感触を感じながら
目は宇宙でまだ届かない僕の本体を待ち侘びながら
歯と歯茎を見つめている CMだ
でき物怪人の吹き出物は
静止している振りをして嫌らしく姿を変える
手には何時もの携帯電話の感触
ニュースキャスターのアシスタントの唇は歌い出した
「全ては嘘」だと
煙を吐いたブラウン管から
途切れ 途切れに

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121029_265_6440p


6463 : 魚  黒髪 '12/11/09 23:43:51

石ころ形の悲しみを硫酸に溶かしてあぶくにしようぜ
悲しみを減らしたい心という、他者のメロディーを奏でてさ
石ころに語らせて耳をじっとすますんだ

津波が海の中に引き込んだ
魚は喋らなくても視線をそそいでいるだろ
モーターサイクルボーイよ、つんざくエンジンで、おびえをかき消して
饒舌な音を、あたりにこだまさせて

歳月が
重いスポンジケーキみたいな物だったら、誰も持てない
心配の多い心はわからない
化学プラントを壊して爆発を起こすみたいな破壊衝動、注目されるほど痛い

僕の口を被っていた黒いカーテンは、今記憶だけを覆う
コントロールのきかないインビジブルの
色をみるために切り裂く、ナイフで
パックリと口を開いた記憶の中に昨日の血がつく

悲しみは水よりも軽い
見てみぬふりと黒メガネで覆われてきた物事の意味を、縫い付けるための糸が、繭からつむぎ出されている
空に上って空気に紛れるまでに悲しみが溶かし出されたら
ああ神様のところに届いて
叩きつけるような雨が人を犯す
同じことが繰り返される
雨上がりの道路の輝きや架かる虹は美しい逆理
少し空気の成分が変わったのは
魚の減少と関係がある
海の底を見通せる魚眼は
認識の甘さに警告の光を発する
最後の守備兵である魚達が泡を吐いている

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121109_488_6463p


6456 : ボタンホール  sample '12/11/06 03:29:51

プラットホームを歩いていたら
数歩先で人と人とが
すれ違いざまに接触した。
体と体の打ち合う音がして
ボタンがひとつ
床に落ち、私の足もとに転がった。
思わずそれを拾い上げ
視線を元の場所へと戻したが
どちらが失くしたものかは分からず
落としましたよ、
と言う声は喉の奥で綻んだまま
ふたつのうしろ姿は
うしろ姿の中に紛れてしまい
私の手の中に、ボタンは留まった。

電車が到着する。手の平を握る。
コートのポケットに手首を差し込んで
降り口に近い座席に座る。
態々、急ぎ足を立ち止まらせて
渡してあげる程のものじゃない。
そもそも、拾い上げるものでもない。
そう思って、目の前の座席から
女性が立ち上がり、電車を降りて行った。
その空席には誰も座らないまま
電車が次の駅に向かったので
小さな緊張のたがが外れたのを感じつつ
対面する車窓のガラスに映る
自身と少しの間、目を合わせてから
窓の外へと、焦点をやさしく押し込んだ。

郊外の風景には、郊外の風景らしい
適切な距離と、適切な暗さを守るように
家々が夜に針穴を開け
最小限の光で塞いでいる。
そんな、つましい星間を
電車は光の束となり
開封された夜の切り口から
終点、とアナウンスされる場所まで
長い手を差し伸べて行く。
私はそこから、みっつほど前の駅で降りる。
駅舎から少し歩き、入り組んだ路地へ入る。
その奥にひとつだけ
煌々と点る、家の明かりがあった。

路地と人家を区画する為に
設けられたブロック塀には
大半の葉を落としてしまった
花水木の影が貼り付き
細く神経質な枝振りは
眼の端に浮かぶ静脈を思い起こさせるようだ。
二階の窓辺に置かれた観葉植物の鉢植えが
磨りガラス越しに映っている。
その奥に現れた人影。
カーテンが閉められ、長方形の光に
型枠通りの闇が嵌め込まれる。
木の影が消え去り、私の影も消え去って
不意に訪れた暗闇に一瞬、
目を開けているのが不思議に感じた。

私は数分後
いくつかの角を曲がり終え
使い古した眼鏡を外し
眉間を指で軽く揉んだ後
弛めた手の平からゆっくりと剥がれ落ちた
黒いボタンに目を留め
知らない街のどこかで
冬のコートの一部に
やり切れないボタンホールと
無用の重なりだけがあることを、思う。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121106_392_6456p


6466 : 霧の魚  19 '12/11/10 17:58:47

孤の映える日常と霧の中のダルマ船に乗り川を上り遡るごと意識は暗くなり気絶する
本来的には祭りがあってそれは神輿の上から見下ろす華やぎと歓呼であったのかもしれない
孤の映える日常の 道行きは暗く
他者の声をノイジーな無に換えて祝祭は滞りなく進み その盛況は「孤」の死の方から 一方でこれは同時に孤の祝祭であり 同時に進行し時間を隔絶した 祝祭と孤の祝祭は同じ時間に執り行われる

ああそれはこの時だったかと彼や彼女は遡航の中で幾ばくの記憶を得る 何がしかのささやかな断片であり規視感に似るその再現性が ちょうど空気の中の宴席のようなリアリティを帯びる
祝祭が盛り上がると死に近付くので孤の祝祭も盛り上がる 孤の映える日常の祝祭になる

孤が孤である必要はなく 孤室の中に複数人の死体が見られる事もあり得る これは比喩であり 祝祭の立場から彼らの死亡を確認しているのがこの文中の「死」だ
けれど日常を生きる時は生きているのだから 孤は死と同じ意味では表現されない
ここでの「死」は 回収されざる孤の室の内での生の消耗を判定していた
生は別の意味では死だったのだと この文言はちょうど霧の中 ダルマ船の揺れを人の言葉に訳すようにして 聞き書く事が出来る
生きてんだか死んでんだか というバージョンもよく聞かれる
生きながら死んでいるのは目に見える光景であり絵具やのみや光源が必要になるが孤の映える日常はそれ自体が絵具になる

ダルマ船は死を渡り当たり前のように航行し
霧笛を発するならそれは霧の向こうにあるものを乗員に告げ 乗員は明日の準備などをする事になる 霧の向こうは明朝以外ではないからだ

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121110_501_6466p


6453 : ランページ  大ちゃん '12/11/05 16:02:39

街で私を混乱させる
お調子者の愛は
ダンスから始まる

アルコールの滲みた
価値を持つ臀部から
放たれた蒸気の針
掘るべき穴以外は
装備した皮膚でさえ
目眩のランページ

大振りのレモン
スクィーズした
真夜中の天気雨を
二人浴びながら
ケミカルに求め合い
強酸の紫煙を上げる

偶数の2人は
夜明けまで遊ぶ
奇数の2人
明確にされない
愛の数字は虚数
罪の重さの実数

白を生じる直後の
愚かな無は気高く
匂いは影に伸びる
過剰をからめ取る
醜い獣にされた私
それとも足を噛む鮫

幸運が欲しかった
誰を裏切るかなど
その時の風の気紛れ
指先から吹かれて
新月の夜のうしろ
夜明けの北へと帰る

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121105_377_6453p


6468 : 漂っている  山人 '12/11/12 17:31:58  [Mail]

漂っている
田の畦の
名もない雑草の根元に
捨てられた溜め池の
透き通る水の中に
細い目で鳴くアマガエルの喉に
咽び泣くような曇天の中の
炭焼き小屋の煙の中に
確かに漂っているのだと思いたい

石が石で終わるのは
あきらめた夕暮れに似ている
敷かれた道はひび割れ
雨水を染み込ませている

遠く重い呪縛から
糸が解けるように
開放させてください

雫る先の
かすかな四十雀の細かい動きは
澱んだ空気を彫り進む
暖気された空間が生まれる
少しだけ光は漂っている

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121112_532_6468p


6469 : お茶を薄める  ヨルノテガム '12/11/13 00:47:57



黄色を暗がりで見ていると金色に輝く草原の満月だった 牛が骨を売って旅していく 寿司ネタは左からまぐろはまちサーモンの順で並び口穴へ消え失せたが 最後の紅しょうがの味がいつまでも残った 照らされた牛が売って歩いていく 青い湖の水も夜は暗く浮ついた 売っていく牛は白く向こうへ遠ざかって歩調も無く小さく、消えずに小さく距離をひらいた

彼のカバンから記憶がこぼれ落ちる 彼はカバン色した、顔面に彼自身の記憶を貼り付けて居た ・・・・・いつまでも残った、あの草原の中の葉の柔かいのを干して乾かし 雨で煮出した汗のような代物を口へ注ぎ込みたくなる、もうなっている 彼は産まれるとき 卵が先か女性が先かを考えながら風景のなかに転がり落ちてきていた 風のなかに引力の話を聞いた
地平線になびく髪の進路へ記憶はバックボーンバックボーンと季節を移す 燃え上がる花の人たちが境目のない百年の曲がり角や大木の木陰、建物の眠りを醒まさないで通り過ぎる 彼は寿司折の空箱を何かに使えへんかなぁと思って、けど毎度捨てる 彼は夜の牛に喰われる夢を見た その牛は骨を売って旅して歩く 暗闇をゆくぼんやり白いぼんやり遠くなるそれに食む食むと飲まれている 壁画のように眠る記憶の中で 彼は何人もの彼の伝記に聞き入っている それぞれのカバン色した顔は全く鮮明にはわからないが 喉が渇いて アレ飲みたいなと思うが長くミイラ我慢しつづけている

黄金仮面は幾重もの満月の輝きを甦らせる

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121113_537_6469p


6465 : 世界の終わり  コーリャ '12/11/10 12:17:14


弟のプリンを冷蔵庫から盗む。鳥の名前にやたら詳しい。血液型が気になる。勉強ができない。(世界の終わり)

遅刻する。早退する。ブッチする。君に会いにいく。電車のドアが目の前で閉まる。(世界の終わり)

「蟻の巣にさ」「うん」「溶かしたアルミニウムを流し込むのね」「えげつな」「でも、キレイなんだよ」「うん」「ビルの化石みたいでさ」「うん」沈黙が実はキライじゃなかったりする。(世界の終わり)

蝶を原に放つ。シマウマを塗り絵にする。月光が自販機に落ちてる。天使についての歌を口ずさむ。(世界の終わり)

カブトムシになりたかった。船乗りになりたかった。通訳になりたかった。 詩人になりたかった。(世界の終わり)

ビッチのあの娘はカポーティを借りパクした。「遠い声、遠い部屋」(世界の終わり)

光る。回る。自転車のスポークス。坂道をくだる。先月の移動遊園地のポスターをはがす。(世界の終わり)

決まって深夜に出発する。助手席にカバンを置く。なにも終わらない。なにも始まらない。環状の橋を越えつづける。朝にはまだ時間がある。タイムスリップしちゃいそうな。濃い霧の先。(世界の終わり)

いつもの散歩道に花が咲いてた。(世界の終わり)

流れ星はあまり見たことがない。どこからか懐かしい匂いがする。振りかえる。シーンとしてる。フードをかぶる。冷蔵庫の扉はパタリと閉める。(世界の終わり)

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121110_495_6465p


6462 : こんなにも、差し出された  る '12/11/09 02:54:50 *1  [URL]

風を食う虫はフォウと呼ばれているけど、誰もやつらを見たことが無いから、どうしてやつらがフォウって名前なのかは誰も知らなくって、枯葉がくるくると季節と呼ばれているものに捧げるためのダンスを踊り終えて歩道に横たわる時、みんな口々にフォウ! って呼ぶんだけど、小洒落たスニーカーですやすや眠る枯葉を踏みつける音と一緒に、僕らはフォウがどうしてフォウかなんてことはどうしようもなく忘れてしまうね。

風を食う虫は雨が降ると全滅、けど、フォウは死んでいく瞬間にたくさんの色に光るから、僕らはやつらのなきがらを虹って呼ぶ、手を繋ぎながら一緒に叫ぶひともいるし、一人ぼっちでかなしくささやくひともいる、それでも虹は消えてしまうし、僕らはどうしようもなくフォウのことを忘れてしまうね。

風と風を食う虫の関係はまるでにわとりと卵、仮定として全部が静止してクリスタルになっちゃった世界を想像したって、それを見た誰かの口からまたため息や歓声がどうしようもなく生まれていってしまうのだから、僕らの声はどこまでもフォウの歌声なんだよ、だなんてポエムなことを言っちゃうひとが今夜もひとりいたりしてさ。

だから僕らのいとなみを風と呼ぶ比喩でもって、僕らこんなにもたくさんの凪ぐための吐息をめぐらせてしまうから、いつまでたっても声は湿るように眠りにおちていくし、いつまでも眠れない夜があるなんていうジョークみたいなかなしい出来事がまかり通ってしまうね。

男の人の優しい台詞をあまりにも信じてしまったジャズピアニストが冷たいフロアに最後のトーンを響かせる時、ベッドでお互い顔を覗き込みながら持てる限りの透き通った声でおやすみという時、薄くなった財布を革のホットパンツのポケットに突っ込んで小刻みに腰を振りながら競馬場を去る時、ボイスレコーダーに向かってさよならって言う時、涙の冷たさを頬で感じる時、いなくなってしまう時、こんなにも、僕らに

フォウは死んでいく瞬間にたくさんの色に光るから、こんなにも僕らに差し出された、終わりに、僕らはどうしようもなくあいまいな色彩に染められたうつくしい答えを見つけ出してしまうね。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121109_482_6462p


6472 : 笹舟  深街ゆか '12/11/14 21:13:28


生まれて初めて産んだ赤ん坊を笹舟に乗せて真夜中の海へ送り出した
たっぽん、たぽんと揺れる、月明かりを孕んだ黒い波が
太陽に照らされてひとすじの境界を取り戻すころ
あの子は昨日までの出来事を忘れてにんげんになるんだそうで
わたしは沿道に停車してたマーチに戻ってクラクションを二度、鳴らした
海は相変わらずの無関心さでもってすべて飲み込んで、何事も無かったみたいで



あんたもわたしも生まれたんだから 死ななくてはならないね
そして生まれたなら  産まなくちゃならないんだよ



零時を過ぎてキッチンはいっそう静かになった
開けっ放しの冷蔵庫から異次元の生物が何か呟いているけど
わたしは缶ビールを飲んで床の上で微睡んで、移ろって、揺れてた
途切れ途切れの、波の音が聞こえる 冷蔵庫から
笹舟に乗って  わたしは真夜中の海を漂ってたんだったね
そして沖へと流されていくうち 輪郭がぼやけて ひとつの点になってしまって
点と点とを結ばれてしまえば、そこに秩序が浮かび上がるんでしょう?



生まれたら産まなくてはならないのにわたし産むのが億劫だった
それをみてた異次元の生物、細く長い腕で柄杓を掴み笹舟を沈めて
産めないから沈むしかないんだよ、滑るように今日を迎えたね
そう呟いて、冷蔵庫は閉められキッチンは暗闇、いつも通りの



寝返りをうつと口から海水が溢れ出し
遥か遠くのほうからクラクションが二度、聞こえた

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121114_579_6472p


6473 : ひっかき傷  泪 '12/11/15 13:46:50

何も食べないことにした
そうしたら、罪が、償える気がして
ほううううるぅほうううるぅ
聴こえてくるのは洞穴の奥から聴こえてくる震える遠吠え
傷を付けて歩いたような気がしていた
本当は唯、傷を付けたいともがいていただけだった
クグレボッチはボストンバック一つを持って駅のほーむに座り込んでいた
ボストンバックの中には、彼の宝物の笛が一本入っているだけだった
ぴー、と鳴らすと彼の元に星の列車が降りてくる
いくつもいくつも連なったそれは彼のゆきたい先に繋がっている
母が持たせてくれたお弁当は彼の心を沈ませていたから
彼はお弁当を其処に置き去りにしている
駅のほーむにはクグレボッチひとりっきりで
多くの人間達はクグレボッチを空気の様に無視している
無関心の中に
クグレボッチは佇んでいる
降りてきた連なった星たちを
クグレボッチは悲しい顔で見つめている

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121115_596_6473p


6449 : 病床詩篇抄(平成21年秋)   中田満帆 '12/11/03 20:41:37  [Mail] [URL]

   反省材料として


不眠

 ふけてゆく夜
 のうちがわ
 おれという犬のくそ
 のような叡智にはかならず
 休息の欲しいときがある
 しかしろくでもないものが宿った左の手
 をもちいていくら電話の古く黄ばんだ
 回転式ダイアルをまわしても
 通じた回線をむこうにおれの欲しい眠り
 について註文がとられても
 その配送係はいっこうに魂しいの戸口に現れない
 かれらはこのおれを灯のもとにゐかためて
 なんの良心をも動かさないばかりか
 もとよりそれをもっていない
 なんと
 あたまの
 いかれたひとたちだろうか
 煙のようにみせておれのいらだちが
 室のなかに充ち
 けっきょくはまた
 通話の路次へひかえす
 ひきかえさねばならない
 それでも聴こえてくるのは
 半音高いところにおきざりにされ
 付点を加えられてしまった
 とてつもなくあわれで
 うつろなソの音だ
 その音は終わり
 を告示されることのない
 昏い下水道の鉛管によく似てる
 そんなもののためにおれのなかの詩
 神どもはますます起立を高め
 あたらしい愚行の吉報を奏でる
 おれはいらだちを抑えるべくズボン
 のまえを大きくひらいた
 とりあえずあほうの
 一つ覚えのように
 かわいいと
 褒めやかされる
 こぎれいな女ども
 そこへ完なる言語の
 辱めを衣にまとわせて
 おれのふくらみきった温い
 かたまりをそのおもざしにもっていき
 その在り方がみてくれだけの
 いつわりでしかないことに
 気づかせてさしあげる
 楽しくむなしいたわむれ
 に泪や洟が流れても
 おれは非情さをして魂しい
 に哄笑をたたきだす
 しかしこれも
 わずかなあいま
 いまだ註文はとどかない 
 しかたなく枕元を彩っている
 およそ九万の書物をひも解き
 じっくりと味を舌(ミ)てやる
 日本語を解き放ち
 英文を素読し
 あらゆる時代の
 書き手の顔面や内部
 をもっとも深いところから
 腐らせてさしあげる
 日の本の国においていま
 いちばん温い詩の生産法で
 おれの方舟だ
 澱みない欲望が
 おれを言の葉へ
 その育みへ
 かりたててやまない
 手をとめてしまい
 あまつさえつまらせて
 しまったものは都市のうらがわ
 に放りだされたdustboxへみずから
 を棄ててしまうがいいぜ
 きれいなだけを無難なだけを
 取り柄とするぷちぴかな思考の
 詩にはおれがくそをまみれさせて
 息をするかばねとして曝されろ
 おれはとんでもないあほうだ
 こんなことを書いたって
 どうにもならないのはわかっている
 おれの休神は叶いそうもない
 おそらく百人以上の配送係たち
 はまるでたわごとのような原動機付
 自転車にまわがりながら夜の深化
 されるなか自動車道路の土瀝青を寝台にして
 あるいは住宅地の歩道を破壊しながら
 またはばからしさを極めた
 ペニーアーケードの店先
 で若さというろくでもない
 ものをただひとつの拠りどころ
 に見等狂いの位置でばらばらに砕け
 散ってぷるぴるとみずからの内部から
 両の目を閉ざそうとしているのだろうぜ
 おれは唇ちへ珈琲を流し込んでは
 眠りというものをあきらめる
 そして熟れはじめの果実
 そっくりな詩をノート
 のうえに刻みはじめ
 果汁まみれの手が
 さまざまなところに
 はびこってやまない痴れもの
 には解き明かせないだろう
 未明のまぼろしを映す
 おれはおれ以外のやつらを
 おれの肛門でふさぎ
 孤立しきった夜へ
 天使どものすてきな臀部を送りだしてゆく
 さほど遠くない路上から
 煙や火のでそうな消防車が
 赤くあかく駈けていった
 おやおやまたも愉快な野外劇が
 祝祭を彩っているみたいだね
 どうせ燃えていくなら表情
 豊かなご家庭が望ましい
 おれはおれに吐き気を
 催しながら窓を見た
 明日は雨が降る
 そのむこうは
 冬の季だ
 あの色彩にはいつだって手心というものがない


吉報

 おれが夜
 の充分すぎる
 そのたわくえに魂しい
 を清められているみぎり
 日の本は愛痴から生まれでた
 屠与太の自動車(うんこ)がその犠牲者の血と
 脂で臭う車体をわが戸口にすべりこませて突如
 冬枯れの町がひびわれくだけてしまうような
 冷たい警笛をぶちかまし始めた
 しかもその音は一秒や三秒や
 五秒では終わらず
 七秒や九秒や
 十一秒であっても
 鳴り止まない
 ようやく起立し始めた
 ノートのうえにいる神紙も
 勢いよく払いのけられ
 すべてを薄っぺらい
 造花のびらびらに
 変えてしまった
 なんということでしょう!
 テレビジョンの無数なる銃眼から
 女の声が驚嘆をあげて
 だらしなくひらいた
 おれの唇ちから
 きれいごと
 が落下
 する
 のが見える
 もうなにもかもが
 じゃまされてしまって
 せっかくのヴラマンクも
 性犯罪者のゴーガンに変わる
 木でつくられた窓を向こうにして
 おれはおれのあたらしい敵どもを見
 洗浄を知らない手と足をくぐらせながら
 その自動車のなかを確かめる 
 まったくのあほうどもが
 いちだいに五百匹も
 棲みついていて
 廃油まみれの
 息とよだれに気づかずに
 からだにそなわったあらゆる孔で
 自己肯定のおしゃぶりをおぞましくしゃぶっていた
 吐き気を恋人にして走りまわっておれは神の
 ノートにそのすべてをぶちまけてしまう
 やかましすぎるあほどもよ
 いますぐに黙らなければ
 おれはまたひとつ至上の
 現代詩を完熟させ
 おまえらのあほうづら
 を言の葉のうちにし
 雨季の寂滅で
 みじめたらしく
 濡らしてやるぞ!
 おれの嘔吐の
 そのわずか一瞬の好きまを
 刃い葉できりひらいて
 未知なる男が侵入を
 組み立ててきた
 全身の毛穴から生きた排気が噴きだして眼をひらき
 黒に限りなくちかい青で怒りを突きだして笑っている!
 いったいこいつはなんなんだ?
 おれはとまどいの右-32席を
 あわ手手いて坂砂にした
 そんなばかなおれに
 やつはまったく平気な顔でいう
 あたしがきみのあたらしい詩情なのよってな
 愛らしい衣の襞をひだひだとさせて
 鋼鉄の赤いランドセルから
 リコーダーをもったいぶって
 とりだすとへもけの歌を吹き鳴らす  
 おもてのくるまはなかの害虫
 もろとも苔むす礫にかわる
 なんということでしょう
 なんと
 あざやかすぎる
 現代詩のあらわれ
 だろうか
 またしても
 おれはあたらしいものを
 股ぐらのふくらみにくくりつけ
 十一月の初冬に立つ
 裸の男になってしまった
 警笛などもう相手にはならない
 季節の弾倉にはげしい言の葉が光る
 そしてかれは乳房をふるわせ
 乳香をたらす
 日の本の大地に
 暴れながら咲き誇り
 おれの魂しいの
 うえに叩きつけるように
 その肉体を捧げた!

悪意

 まったく
 きみのいうとおり
 おれはすぽおつ好きや
 すぽおつ選手たちがきらいだ
 やつらはくさくのさばりつづけ
 それをたれかれかまわず
 おしつけたがる
 たとえば高校野球の
 ばかどもは火だるまになって
 くたばっちまえだ
 せいしゅんの汗を散らしては
 弱いものいじめによねんのない
 すぽおつまんどもはくたばれだ
 ベースボールはどぶに沈ませ
 フットボールは汚泥の宴を
 テニスは豚にひらかれて
 バスケットは存在
 そのものが猿の
 はなくそ卸市
 かれらのどりょくがくさすぎて
 部屋の窓すらあけられない
 かれらの涕が降る日には
 ひとつの町が消え
 吐く息は濃霧を
 輝く前歯が数千の世帯を
 眠りから妨げてやまない
 大地に残された靴は
 ひと知れずガスを放つ 
 どうしてこんなことになった
 のかだれにもわからないね
 おれのようなひかげもの
 はぐれてしまったものたちは
 かれらの踏み台にされ
 週にふたりはあの世の切符を握る
 だれかかれらをぶちのめしてくれ
 かれらを援するものを撃て
 ポリー・パロッドはゴルフクラブに
 キャシー・キャットはバレーのボールに
 サンヨー・ゴリラはバスケットの選手にされてしまった
 あたらしい路はやぶりすてることからだ
 まずはあらゆる施設をあぶれものに
 開放してアウトサイダー・アート
 を確立させようじゃないか
 すぽおつまんはお払い箱だぜ
 力士はダイエット器具の実験台へ
 野球のばかどもに玉子割りをチームでやらせ
 レスリングには同性愛のアピールを
 空手家に林業と製材業を
 モーグルは人間椅子として売り
 ゴルフは解体手元で再出発
 テニスはプロのパンチラ 
 車体耐久テストはボクサーにおまかせ
 スピードスケーターは発送係へ
 フィギュアスケーターはフィギュアへ
 ボブスレーは通勤快速を始め
 フォーミュラーを救急車に
 卓球をパントマイムに
 それぞれ早急な対応
 が迫られている
 個別の選手に
 言及すれば
 たとえばオダノブナリ
 なぜきみは猿園からの呼び声に
 答えようとしないのか?
 アサダマオよ
 あなたはマロサマ
 と呼ばれることに抵抗
 はないはずだ
 アンドウミキよ
 顔芸は悪の世界ではない
 コトオウシュウ関よ
 あたらしいヨーグルトブランド
 はもうその手のなかだ
 アサショウリュウ関よ
 モンゴルマフィアのドンが空白のままだ
 イシカワリョウ
 学級委員がひとり足りない
 マツイヒデキ
 暴力パブにはゴジラが不可欠
 ムロブシコウジ
 デューク東郷のあとをよろしく
 フクハラアイ
 ランチBにアラカルトAを頼む
 などなどなど
 もちろん監督や
 解説者も例外ではすまされない
 ノムラカツヤは建設現場の監督へ
 マユミアキノブは映画監督へ
 オカダタケシはポルノビデオへ
 それぞれふさわしくあればいい
 そしておれの希望としては
 美人に限って競泳女子に
 水着のむこうに乳首を
 うっすらさせながら
 おれのうえでみだらなバタフライをやってくれ
 おれはほんとうにすぽおつまんがきらいだ
 これはささやかな悪意にすぎない

検品

 とくに晴れた秋は
 かれらの好物を見ろ
 かれらのきらうものを知れ
 かれらの孤立を知らないかげを撃て
 かれらの馴らされたおもざしに唾を吐け
 かれらの場を沸かすジョークに厭き
 かれらの春秋分点の日を覘け
 かれらのうそにくそを塗れ
 かれらの声に靴をおけ
 かれらのまえに立て
 かれらの足おとに脅かされて
 かれらのあざけりに魂しいを殺されつづけろ
 どれもこれもが
 まったくのぺてんで
 まるであさましいくせに
 きれいごとをたぶらかしては
 そのかおを尻へうずめるアホウドリ
 きみもおれもそこにちかよりたくないために
 多くの本を聴きながら詩を記入する
 しかしかれらはたまに追いかけて
 かれら自身充たされようと
 たかりいたぶる愚かもの
 青すぎるしもつきが到着して十三日目の金旺日
 枯れ色も新緑もない貧民街のなか
 おれらはかれら納税者によって
 生かされるあわれな豚だった
 喰える部位はどこにもない
 聖さをもった言語の窓ふき人夫
 乾パンが配られ
 オーヴンの電源が入る
 避難所と炊き出しにならび
 手配師の車が黒い犬を轢き殺す
 すべてが完なるあやまちのかさなりさ
 おれの左手はいつも雨や土や死のなかにあって
 さまざまなものを検品にかけながら詩を産む
 ひとびとはみなフランケンシュタイン青年
 みずから産みだしたものから逃れて
 眼をつむっている独善家たちだ
 おれはかれらを追いかけてみようか
 かわいい娘がおれ好みの髪や衣で通りかかった
 そしていう──おれを指さして
 あのひと臭そう
 汚いみなり
 みにくい
 ださい
 などなど
 だからおれはいま
 黒い犬のかばねを抱いて
 一方通行を逆さに歩いている
 果たして生きることは幸せか?

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121103_362_6449p


- ealis -