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いかいか (ikaika) - 2006年分

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Storywriter,Poemwriter,Songwriter,Hatenanikki

  ikaika

#The Sunshine Underground

七日間降り続いた雨が突然止んで、僕は、靴下を脱ぎ捨てて小屋から、原野へ向かって飛び出す。僕は、僕の体を必死になって追い掛け回し、原野を駆け回る。雲の隙間から陽が指してきて、ところどころに陽だまりを作っている。その中で、金魚が数匹泳いでいる。豪雨が残していった水溜りに手を差し入れる。そして、何かを掴んで引っ張りあげる。一人の黒人の男性が、下半身だけを衣で隠した姿で、現れて、僕は、やぁ、こんにちわ、と、挨拶をする。彼は、静かに、頭を下げて、挨拶を投げ返してくる。それから、彼とは友人になって、火の起こし方や、食べられる雑草をとったりしながら、暮らしたが、ある日、僕が眠りに入ると、僕はそのまま、水の中を泳ぐ夢を見る。すると、頭上から誰かの手が差し入れられて、僕の肩を掴んで引っ張り上げる。彼は、白人の若い男性で、僕に向かって、HELLO!と、挨拶してくる。僕は、静かに頭を下げて、挨拶を返す。そして、彼に、火のおこし方や、食べられる雑草について教えてやった。


Ohayou!おはよう!


#Around The World

友人とともに、1934年作の『オズの魔法使い』を見る。夢の世界と、現実の世界との区切りは、白黒の絵とカラー絵に隔てられており、なぜか、現実の世界の描写は、白黒のままで、色がついているのは、夢の世界。ドロシーは恐らく、精神的に不安定なのだろう。彼女の感情の起伏の激しさがそれを物語っている。なるほど、つまり、こういいたいわけか。私が今、見つめている世界は、まさに夢なのだと。現実の世界は、白黒で表されるように、無味乾燥な世界で、美しさ、醜さ、味、そんなものはどこにもないのだと、見終わった後、隣に座る友人に、「はじめまして。」と挨拶をした。


虹彩という夢を!


#Over The Rainbow

麦畑を妻とされている人と手をつないで歩いている。黄金という言葉がふさわしい風景の中を、麦を掻き分けながら進んでいくと、私の小さな家があり、犬が一匹こちらに向かってほえている。土壁の家のところどころにはステンドガラスがあって、紫や緑、赤、黄色、と、色彩を放っている。さらに、進もうとすると、妻とされている人が腕を強く引っ張る。振り返ると震えている。どうしたのか、と、問うと、あそこには、魔女が住んでいる。という、いや、あれは僕らの家じゃないか、と、答えると、二階の窓は開いて、一人の老婆が、箒にまたがって、私たちの上を通り過ぎていった。延々と続く麦畑、黄金のじゅうたんの上を、魔女が飛んでいく姿に見とれていると、妻とされている人は、ほら、いった通りでしょう、と、では、僕らの家は?、と、聞きくと、指をさして、ずっと向こうだと言う。


落下する地平線上を超えて、そのまた向こうまで、そこではもう私は中心ではなく、誰かの中心へ接近する、そう、私が中心でいられなくなる場所まで、永遠に!


#World's End Garden

ここは、光が鳴っているな、ツー.....トット.....ツー.....トット、と、映写機に映し出された私の背中、円錐形の内で青白く照らし出されて、影がスクリーンに大きく写る、影は私の意志や体の動きに対応せず、一人でに歩き始めて、舞台袖へと消えていく。私だけが、未だに、映写機に照らし出されて、青白く、何も映し出さずに、影も作らず、ぼんやりと取り残されたまま、ずっとその場から動くことができない。そして、何かが大きく軋む音だけが、会場に広がって、私は地面に倒れこみ、強く額を打って、嘔吐した。


最後に、嘔吐物の中から無数の蝶が飛び出し、劇場全体を青く染める、


#Reset,Sunset,Emerald

 bird、達が空へ、そして雨が、rain、まずは、喉を切り裂こう、無数のガラス破片が飛び散って、すべてを光に変える、次に、額が裂け、陽が昇った、最後に、真っ二つに裂けた体から、Emeraldが、飛び出して、そして私を包むまでの話を、かなえられる願いことはいつも一つだけで、思い出せばはるか彼方、私達がいまだに姉妹であったころ、アポロンとアテナイの女神の憂鬱のうちに生まれた一つの涙、緑、赤、黄色、そして、あの青の延長線上で鳴り響く、アリアが、地平線上に落下するまで、数え続けられる数々の数式、それら一つ一つに刻み込まれた、秋月の落ち葉、そして、すべては、明暗の点滅のうちに、すべての夜を焼き払う光の中で、爆撃音が、ポーン、ポーンと鳴って、bird、達は、空を忘れた、blue、blue、青よ、青よ、どこへ、どこへ、早朝、世界が吐く吐息の内に隠されてしまった青が、水泡に包まれて、成層圏で破裂するまで、地球儀を駆け回って、花に水をやる誰かの上に、雨が、そして、rainが、このあまりにも晴れ渡りすぎた空の下から、今すぐにでも連れ出して、雨の中へ、Emeraldに包まれて、最後に光が、光に焼き尽くされる頃に、もう一度、世界を、Emerald!


千の滅びの歌

  ikaika

「密猟者」

海綿体の背筋ひとつから光は始まる。無数の鼻腔の内から垂れていく光、手を差し入れよう、 私の右手の血管から噴水のように血が沸き起こり、ちょうど午後に、バルブは閉められ、都市の機能は回復する、 輪廻は再開された、と、私の耳元で多くの人が囁きあう、呼吸と呼吸の間に生産される光、また、手を差し入れよう、 二十日鼠の尻尾が火花を飛ばす、水泡の内に光が見える、さぁ、手に取ろう、そして、左手は壊死する。 夜、夜警が行われる、松明を分けてもらい胸に燈す、母が喜びながら、私の前で火打石を鳴らす、

盗み取られた青ざめた神の群像、淡い透明な松明
夜空にに広がった噛み切ろうとして噛み切ることのできない息
裏口から密猟者が逃げ出していく


「そして、千の滅びの歌」

野ざらしの私の肉体、乳房に似た太陽、もぎ取られた私の果実、 張り裂けた心臓を今日もスケッチする、 筆を握りつぶし、歯で噛み砕く そして、千の滅びの歌、腐臭のする老人たちの死体によって歌われ、水浸しの七日間、野に響き渡る、苔の裏側に隠れてしまった透明な虫たちの声を聞き、地球儀の中に紛れ込んだ蟻の黒い額で見られる夢を思い、そして、私の閉じたはずの瞳は閉じられずに遮光幕に覆われたまま顔の輪郭を超え、あらゆる山脈や都市を超え、砂浜にたどりついて波にさらわれる、再度、千の滅びの歌、腐臭のする老人たちの死体によって歌われて、埋葬される透明な瞳が最後にゆっくりと瞬きをする、その直後、カモメが一匹、砂浜に書いたお前の名をすぐに消せ、と鳴き、遠くに去っていく、


瞳の奥に最後に宿った記憶―淡い透明な松明が放たれ透明な家々が一斉に燃え上がる、燃え落ちた後、水浸しになった地平線を黄ばんだ歯に、大きな鷲鼻の密猟者が一人、超えていく姿を見た、


Nuits sans nuit

  ikaika

告発された、私の世界が、
ゆっくり夜に飲み込まれる、
瞳の奥で水平線が反転し、
真昼が醜く嘔吐する、
超えようとする昔日の石段の陽光が、
額から滑り落ちて、
握られた私の冷えた微熱、

夜なき夜を巡る、
子午線が海面から、消えてなくなる、
そして、蒸発した、
という始まりから、
流れ出た、貴方の唇から、流れ出た、
貴方、という呼称の中に、
纏められぬまま纏められた、
幼き乳房、の沸き立つ、
平野上で、
私は、G線上を歩く、
刻まれたステップの内に、宿った、

戸口は閉められ、
告発された、
夜の闇の中で、
告発された私の世界が、
落日を経験しないまま、
断崖から見下ろす、少年の怒りに満ちた眼に、
一瞬の雷光、
手は離された、
繋がれることなく、
ただ、汗は握られていた、
貴方の、いや、私の冷めた微熱を宿した額から流れ出た汗が、
唯一握られていた、
そして、青ざめた、
一気に青ざめた世界が、
告発によって
晒された、


すべてが醜く青ざめていた中で、
線は途切れた
開かれてしまった平野を目の前にした、
挨拶が燦燦とうんざりするほど降り注いでいた、

文学極道

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