コンクリートの波頭で
私は水平線の大きな射精をみました
どうして男たちは抗うのでしょう
どうして孤独に甘んじないのでしょう
もしかして私が見た大きな射精は
男たちの癒しようもない孤独だったのでしょうか
私は海から出現した
その山のような噴出物に驚いて
もう美や芸術を捨てました
それよりも もっと
身近なものを信じたかったのです
私は自分の買い物籠付き自転車を
今までに増して愛用しました
それでもふっと襲われるのです
夜に白熱街灯の道路をたどって行くと
それが男たちの愛の道標をたどっているようで
私は逃げ出したくなるのです
買い物籠付き自転車を止めて
今日買った物を
ひとつひとつ
泣きながら確かめるのです
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声 - 2005年分
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襲撃
声
海を見よ
声
モスグリーンの葉に
茶色がかかり
その樹を見る私も老ける
どういうわけでもないけれど
空を見上げると
雲の合い間から
エメラルドグリーンの海のような
その雲の縁どりはやや黄金色にひかっている岸辺
それは美しい海のような
地表に目を下ろすと
小さな子らが2、3人
砂遊びをしている
私は思った
きっとこの子らは
海辺で砂遊びをしているんだと
しばらくすると
また空に目を遣ってみる
今度は雲は雪の港になっている
輝く白のSNOW
ここは北国の最果て
海を見よ
川辺にて
声
川辺を歩くことにした
遠くから女の人が自転車の音で
せせらぎを運んでくれた
空には白い月が
バニラアイスのような待ちわび人
川をのぼる
つがいのカラスが餌をついばみ合っている
それを野草の小さな赤い花が祈るように見つめる
橋に着くとやきとりの匂いが鼻に付く
カラスに食わせてやればよかった
橋を折り返し地点にして
川をくだる
やがて森にさしかかると
ある筈もない銀杏の匂いがする
やきとりより腐った木の実を食べていたい
民家のあたりで
はっとひきしまった白い犬の目
口から舌を出しよだれを垂らす
食べたいのだろう
そして下流のほうへ
たくさんのすすきの穂がなびいている
が、私はちっとも寂しくない
そこに自生する柿の木の数多の色づき
川の散歩の終わりどき
夕日に胸が染まる