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声 - 2005年分

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


襲撃

  

コンクリートの波頭で
私は水平線の大きな射精をみました
どうして男たちは抗うのでしょう
どうして孤独に甘んじないのでしょう
もしかして私が見た大きな射精は
男たちの癒しようもない孤独だったのでしょうか
私は海から出現した
その山のような噴出物に驚いて
もう美や芸術を捨てました
それよりも もっと
身近なものを信じたかったのです
私は自分の買い物籠付き自転車を
今までに増して愛用しました
それでもふっと襲われるのです
夜に白熱街灯の道路をたどって行くと
それが男たちの愛の道標をたどっているようで
私は逃げ出したくなるのです
買い物籠付き自転車を止めて
今日買った物を
ひとつひとつ
泣きながら確かめるのです


海を見よ

  

モスグリーンの葉に
茶色がかかり
その樹を見る私も老ける
どういうわけでもないけれど
空を見上げると
雲の合い間から
エメラルドグリーンの海のような
その雲の縁どりはやや黄金色にひかっている岸辺
それは美しい海のような
地表に目を下ろすと
小さな子らが2、3人
砂遊びをしている
私は思った
きっとこの子らは
海辺で砂遊びをしているんだと
しばらくすると
また空に目を遣ってみる
今度は雲は雪の港になっている
輝く白のSNOW
ここは北国の最果て
海を見よ


川辺にて

  

川辺を歩くことにした
遠くから女の人が自転車の音で
せせらぎを運んでくれた
空には白い月が
バニラアイスのような待ちわび人
川をのぼる
つがいのカラスが餌をついばみ合っている
それを野草の小さな赤い花が祈るように見つめる
橋に着くとやきとりの匂いが鼻に付く
カラスに食わせてやればよかった
橋を折り返し地点にして
川をくだる
やがて森にさしかかると
ある筈もない銀杏の匂いがする
やきとりより腐った木の実を食べていたい
民家のあたりで
はっとひきしまった白い犬の目
口から舌を出しよだれを垂らす
食べたいのだろう
そして下流のほうへ
たくさんのすすきの穂がなびいている
が、私はちっとも寂しくない
そこに自生する柿の木の数多の色づき
川の散歩の終わりどき
夕日に胸が染まる

文学極道

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