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氷魚

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


半端な歌

  氷魚


がらんどうの指先、ぱくり裂けた無花果の襞に、欠けた海月の膜の、ぷるん、とした溶けかけの部分、その影をマッチの火で灯す少年、可哀想だなと思いつつ、恋慕を抱いたようなそうでもないような気がしているのです。生きることすら億劫で、銀蠅の葡萄を口に含んだ黒髪の、いじらしさがこうべを垂れて、撫で肩に仄かな光を見たのち、てんでダメで負の遺産になるしかないのです。散り散りと、言葉が降ってきて、どうしようもなく、汗ばんだうなじと、腫れた瞼が「もういいかい」と言うので、私、てんでダメなんです。ぷくり、膨らんだ水蜜を啄んで、彼女が「ごきげんよう」と言うので、たまらなくって、「おやすみなさい」と返すも支離滅裂で、てんでダメだった、負の遺産になるしかなかった、という嘘を繰り返し繰り返し、して、もう一度もう一度して、私、子どもでいたいのね、サイノーない方が丁度いいね、なんて負け惜しみを、毎度するなら死んだらいいよ、君も私も。そうやって詩未満を大量に生産して気づいたら年老いて、色褪せたカーディガンが、女の子の特権になるんだって、怖いね。馬刺しはエロいものだって、みんな知ってるの、我慢してぎゅむぎゅむしてるの、不得手だって言い訳ばっかでまるでピクルスね、お先真っ暗じゃん、オタク、ああ、ダメダメ末期。宇宙人がムササビになって深夜徘徊するのを、特にマスコミは取り上げたりなんざしないけど、馬鹿っぽい方が丁度良くないですか、なんて言って、金平糖で虫歯が痛くって、別に痛くないような、苦しいだけなようなそんな。だから、てんでダメなんです、んで沈むんです、言葉にね、埋れて、本望だよきっとね、そう言いつつぷるんとした海月の膜の影に、あの少年がいるから、死ねないまんまマッチの火になりたかった、ああ、やっぱ、てんでダメだ、やっぱり馬刺しはエロいのね、もうやだ、ほんとバカで、死ぬかもしれない(嘘)、もー、ぎゅむぎゅむ。


夢魔

  氷魚

I
薇を巻く
君の背、
脆く蒼く、
石英の羅列は
夜を燻らす

滔々と
凡人は愛を囁き、
寿命は尽きる


つぶては、なおも美しい。


鮮血の通った
木の葉の譜面に

「sotria」

の刻印

透かせば燐光、
水面の吐息、
爆ぜる氷砂糖に
熟されゆくまりも、
その劣情、
ぽとぽと降りる、
あわ、君の巣。

寝床 □


II

半月状のトビウオの群れ。
ラジウムに君、は射抜かれ
淡く滲んだ月餅は
花の墓を弔っている。

手錠越しの、無、
籠の中の慈悲、
虚な瞳が
君という君に
反射して、淘汰する。

青。
それとも、
白。

崩れた♪記号
ほらよ、
(もういいだろ、)
拙いまま。

眠、
眠、

m、


Hash is money
or……green drank.

Flaut your's gift.
Solitude is more precious…
than passing away.

Blossom's grave,
be content voice a drank ii
is ss ssr …
k
u dy h ax t d
mr ur rr
ss sso
ot t tt
tr iaa
a a
a……


Out of the Blue

  氷魚

あー、うん、だから、あーだこーだ、なんだかんだ言って、あたしら多面体なんだ、とうとさ束ねて立派でいるんだ、っていう妄想、に酔って、酔わされ、火傷したまんま、マゼンタの吐息を、心臓に滑らせて透き通った血管にトパーズを浸すんだっていう。臆病だし、別にいいやって、煙った青色にどこかしら大人びてる、多分生きてる、息してる、完全に青々だから、青々、あおあお、あお。

呼び鈴を鳴らして溶けだした利き手から、青空、手繰りよせて紡ぐのは、恋のようなもので、羨望に似ていて、波止場、時計塔、電信柱にふくろう、さえずるカナリアの夢を見ていたりする、どーしたってマゼンタなんだ、侵されちゃってあーいやだやだ、望み薄だって、抱えきれなくって、似てるね、どうも似てるね、って彼女、今日もマゼンタを着るからあたしは青空になりたいんだよ、

いっそ着床してくれよ、絶え間なく揺らぐ蒼糸、喉につまったささくれ、音符、あー溶けだそ溶けちゃお、半回転して、森に沈んで、種になって魚になって。爛れた金平糖の指先、淡雪に帰したアルバムの栞に青空を見るけど見えるのは埃やら結晶やらで、多分ひとしずくの何とも言えない心からの、つまりもうなんだっていいんだよ、何もかも有耶無耶にして、もうほとんど残ってない「あたし」詰めて、ほらもういっそ、なるようになれって君が言うから、蒼くって、やっぱマゼンタで、とめどなく流れてって、溶けだしてって、

探しているのは水色で囚われてるのはマゼンタで、マゼンタっていうのは君の叔母であたしの叔父で確かなお話で君とあたしの子どもなんだってこと。それはもう仕方がなくって、夜に満ちて、朝を枯らし、星を溺らす間のつかの間だってこと、そんな味付けなんだってこと。

ティースプーン1杯/君の脊髄

つれてって、遠く遠く烟るより、青と、届くようなマゼンタに、あーあと、ほうじ茶プラスとろろ昆布。

文学極道

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