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並木ポプラ

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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行列

  並木ポプラ

 

ある時 私は
黒い行列の
傍観者でありました

蝶々の躯の解体され
羽のもがれる様を
無言で眺めておりました

  小さな穴の奥深く
  貴女はそのうち食べられる


ある時 私は
黒い行列の
最前列におりました

次から次に訪れる
働き蟻に
頭を下げておりました

  四肢は既に解体され
  元の姿はありません

彼女を解体したのもまた
黒い蟻だったのかもしれません

花が咲いたよ
散ったよ
種になったよ
芽が出たよ

お骨の命を
蟻のお腹に
蓄えたなら

  さとうでつけた
  しろいおほねを
  おはしでつまみ
  はたらきありは
  たべました

次の命が開きます

芽が出たよ
丈が伸びたよ
蕾を付けたよ


ある時 私は
黒い行列の
中程におりました

彼の血液を侵した者も
働き過ぎた蟻だったのでしょう

花が咲いたよ
散ったよ
種になったよ
芽が出たよ

  そうして あと何回
  見送ったなら
  私の番が来るかしら


そうだね

蝶々は幸せだったね
命を全うした後に
蟻の命になれたから

蝶々は本当に幸せだったね
 
 

文学極道

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