#目次

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渡辺八畳@祝儀敷 - 2018年分

選出作品 (投稿日時順 / 全11作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  渡辺八畳@祝儀敷

猫と戯れ
猫と遊び
猫引きちぎり
猫死ぬ。
思えば
元から猫を嬲っていただけで
元から猫は死ぬ未来だったわけで。
猫死んだ。
かわいい猫死んだ。


兵器少女とシティロマンス

  渡辺八畳@祝儀敷

夜になったらおこたにはいろう
そこから一緒にビデオを見よう
ぷにぷにしたいね 猫の肉球を
欽ちゃん見ながらあったまりながらさ

昼間は敵を殺してきたのだから
夜中はTSUTAYAさんで借りてきた
面白いビデオを二人で見よう
冷えないようおこたにはいってさ
敵の上顎を骨ごと引き千切って
どす黒い血にまみれた手を洗ってさ

君の背中のハッチの縁が
オレンジがかかった蛍光灯に照らされる
クロ子とグレ子が元気いっぱいに
ブラウン管の中で跳び跳ねている
このテレビももう古いね
だけどまだ使えるよ

戦場で君は泣かない
兵器と徹して惨殺を極める
両腕は落ちて中から散弾が飛び出し
敵を粉砕する 彼らの断末魔を聞きながら
戦場で君は冷酷だ
命あるものを容赦なく肉片へ化していく
悪魔と形容されたこともあった
戦場から帰っても君は泣かない
やるべき仕事をしてきたまでだと言うように
声色も変えずに戦果を報告するね
今日は何人殺したかって

それを命じているのは僕だけれど

まずはお風呂にはいろう
硝煙の匂いを流し落とそう
なんなら僕が頭を洗おうか
柔らかくて細い髪を丁寧にね
小さな君さ すぐに洗い終わってしまうだろう
白い泡たちにさわさわ撫でられながら
昼間の眩い射光を落としてしまおう
その後おこたにはいってさ
借りてきたビデオを見よう
今日はドリフターズにしようか
たまにはモンティ・パイソンにしようか
チャップリンやバスター・キートンもあるよ
そういやビデオの中身だけが
なぜだかウラトラセブンだったこともあったね

ぷにぷにしたいね 猫のおなかを
おこたで丸くなっているのをひっぱりだしてさ
猫と僕と君とで面白いビデオを見よう
大掛かりなコントを楽しもう
綿密に作り上げられた笑いの世界を楽しもう
おこたであったまって少しのぼせたかな
君のほっぺはすこし赤いよ
(そのほっぺもぷにぷにしたいよ)
猫はずっと寝ているけど
僕たちはみかんを食べながら大笑いさ
ブラウン管の中の活喜劇は
まるで夢の王国の出来事だなんて
ふと少しだけ思ったりして

ぷにぷにしようよ 寝ている猫を
気持ちよさそうに寝言を鳴いているね
君は戦場から帰ってきたのだから
汚れは落としたのだから
朝にはまた戦場へ向かうのだから
そこでは兵器に徹するのだから
そしてまた敵を無慈悲に殺すのだから
小さな体を展開して銃口を開放するのだから
敵がひれ伏して命乞いしてきても殺すのだから
僕にそれを命令されるのだから
ぷにぷにしながら ビデオを見ようよ
君と僕とで楽しく見ようよ
おこたにはいってさ


ラブ・ラプソディ

  渡辺八畳@祝儀敷

彼女は私を自動的強制的に愛するシステムだということを私は知ってしまった!
彼女からの愛は総てプログラムによって事前に定められたものであったのだった!
彼女の笑みは必ず口角を30度上げ唇を潤わせて行われるのであった!
彼女の肌のつやも髪の長さも総て私のために常時調節されているのであった!
彼女の行動総てが私のために設定されたものなのであった!
彼女は私のための彼女であれと彼女以外の者によってプログラミングされていたのであった!
彼女と指を重ねたあの日も永遠に輝き続けるとも思えたあの日も総てが予定調和であったのだ!
彼女を愛する私の気持ちもシステムによって仕向けられた代物なのであった!
彼女は私のための彼女はシステムの彼女のプログラミングの私の彼女の彼女のあああああああ嗚呼ああああああ
あああああああああ嗚呼あああああああああ嗚呼ああああああっあああああ嗚呼ああっああっああああ嗚呼ああ
ああっっああああ嗚呼ああっああっあああっっっ嗚呼あああああああっっっああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっぁあああ
ああぁあああぁあああっっっあああああああああああっっっっっ嗚呼あああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーああああああああああ
ああっああっあああっっっああああああああああああああああっっああああああああああああああああああああ
ああああああっっああああーーーーああっああっあああああああああっあああーーああああーーーーーああああ
ああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーああぁあーーーーーーーーーーーああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ああ……ああ……ああ……


あっ…ああっ………ああ…………



ああ……


…………………………………………………………………………・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・  ・





海に来ていた。
月明かりだけでは何物も輪郭しか見えない。
私の顔も黒く塗り潰される。
感情を表してしまう顔面などいっそ無くなってしまえばいい。
そんなことを思おうともさざれ波の音は鎮まり続けている。
まったく静かなこの景色を粗い紙でさすっているかのようだ。


浜の砂をすくう。
とても小さな巻き貝が混じっている。
指紋の線ひとつひとつで表面の滑らかさを味わう。
私の意識はただ右手の親指と人差し指だけに注がれる。
僅かな光さえも目に入らなくなっていく。


砂のつぶが腕についたまま取れない。



ヽもヽ
 ヽどヽ
  ヽれヽ
   ヽもヽ
    ヽどヽ
     ヽれヽ
      ヽ列ヽ
       ヽ車ヽ
        ヽにヽ
         ヽ乗ヽ
          ヽっヽ
           ヽてヽ
            ヽ現ヽ
             ヽ実ヽ
              ヽへヽ
               ヽもヽ
                ヽどヽ
                 ヽれヽ
                  ヽ生ヽ
                   ヽ活ヽ
                    ヽへヽ
                     ヽもヽ
                      ヽどヽ
                       ヽれヽ
                        ヽ真ヽ
                         ヽ実ヽ
                          ヽへヽ
                           ヽもヽ
                            ヽどヽ
                             ヽれヽ
                              ヽ恐ヽ
                               ヽろヽ
                                ヽしヽ
                                 ヽいヽ
                                  ヽ日ヽ
                                   ヽ常ヽ
                                    ヽへヽ
                                     ヽもヽ
                                      ヽどヽ
                                       ヽれヽ
                                        ヽ車ヽ
                                         ヽ輪ヽ
                                          ヽとヽ
                                           ヽ共ヽ
                                            ヽにヽ
                                             ヽもヽ
                                              ヽどヽ
                                               ヽれヽ







                             団地の三階、玄関灯が必ずつけられているとこ
                             ろが私の家だ扉を開けたらアイドル並みにすご
                             いスタイルをしている彼女がはだかエプロンで
                             出迎えてくれた。これもいつも同じだ。彼女は
                             まことに献身的態度で私の帰りを待っている。







「あっ、あなたおかえりなさいね☆んもー遅いよ、ぷんぷん!
 ……んへへっ、ずーっと待ってたんだからねっ☆遅かった代
 わりに後でいっぱいいっぱいぎゅーーー☆☆ってしてよね☆       お前のその態度もプログラムだろ
 約束だよっ☆どうする、最初にごはんにする? あなたの好
 きなハンバーグ☆にしたよ☆☆しかも今日のは特別なんだよ!
 だってね☆普通のハンバーグじゃないんだよ☆☆なんと! チーズ       お前の愛は作られたものだ
 ハンバーグ☆なんでーす!!! ☆☆どう、うれしい? あなたの
 ことを思って☆一生懸命に作ったんだからねっ☆☆☆☆残しちゃダメだよ
 っっ☆☆愛情たっぷりなんだから☆☆☆ぜぇーんぶ食べてね☆☆どうする          俺を愛するな
 もうごはんにする? お風呂☆☆も沸いてるわよ☆湯加減もバッチリ☆☆☆だよ
 入るんだったら背中洗って☆☆あげるね☆☆あなたの体ぴっかぴか☆☆にしてあ
 げるからね☆☆☆でもあなたの体大きい☆から洗うの大変かも☆☆☆☆でも頑張っちゃ   俺を愛するな!
 うからね☆☆☆☆ごはんの前にお風呂☆入っちゃう☆☆☆? さっぱりしてから食べた
 ほうが美味しい☆☆☆☆かもね。それとも☆☆☆、わ☆☆☆、た☆☆☆☆、し?☆☆☆☆☆  やめろ!!!
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
          ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
                  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ちかよるな!!!
           ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
             ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆離せ!!☆☆☆
           ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆お前は俺を愛してなどいない!!☆☆☆
        ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆俺もお前を愛してなどいないのだ!!!☆☆☆
    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆目を覚ませ!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ああっ!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆離してくれ!!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ああっ……ああっっ………ああああっ!!!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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サバンナの光と液

  渡辺八畳@祝儀敷

半粘性の液がとくとくと垂れ流れている
青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている
心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて
斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける
その針が地を漂白してまぶしい、太陽も地もその日の終わりに輝いている
美しい、上へ下へ広がっていく空間もまったく美しくて
美しくて、美しくて、気持ちがいい

流れる液体は動物たちであった
ゾウもキリンも、今日はもう終わりなので自ら溶けてしまったのだ
それぞれの背丈から湧き出る瑞々しいとろりとしたうるわしい緑の液体
見るだけでもひんやりとしてくるそれが大地を潤していく
太陽がてっぺんのうちはライオンもカバもめいめいに動き回っていたけれど
日が終わるころにはどの動物もその場に立ち止まって
サバンナの荒い木のよう体を溶かし液体に変わって流れていく
とくとくとリズムよくすがすがしい液体翡翠
傾いた太陽からの光がそれを通過して刺さるのも気持ちがいい

目の前にアカシアの木はなく
滑るように心地よく地平線が伸びていてもはや快感そのものだ
上から流れ落ちる液体の中で私は潤っている
たぶんこれはハイエナだった液だ、なめらかに私の縁を流れていき
私が立つ、少し粘りのある緑色な液体が垂れていくこの大地も潤っている
今日はもう白く焼けきった、カラカラな草も潤ってきれい
透きとおる液体に包まれて私もやわらかくなっていく
この中から見る沈みかけた太陽は宝石のようですごくきれい
美しい、美しい、なにもかもが美しくてきれい

太陽が昇れば動物は動き出して
一日がまた始まるのだ


天と地

  渡辺八畳@祝儀敷

彼女は空へと翔んでいった
僕は地上に残った
生まれながら背に持った白銀の大翼を
避けられぬ己の運命とし
あらん限りの力をそこに込めて
彼女は空高く翔んでいった
僕はそれを地上から見上げているしかなかった

「愛してる」と彼女は言った
「僕も、愛してる」と返した
その言葉は嘘ではないし今だってその通りなはず
だけど、僕は地上に生きるものだ
彼女はただ真っ直ぐに天高く昇っていくなか
澄んだ空気との摩擦を全身に受けることで
磨かれて純化して
余分なものを削いでいき
既に赤々と燃える硬い珠と成っていることだろう
だけど、僕は地を這う虫だ
食べればそれが肉となり
飲めばそれが血となる
羽も無いので湿った土を彷徨い
やっと見つけたそれらを口にするしかない
僕でない様々なものが体の中へ入ってきて
前から次々と異物が押し詰めてきて
僕は変わってしまい
不純になっていく、淀んでいく
オリジナルは失われる
彼女が愛した対象の僕でなくなる

雲一つとして無い新月の夜
あの丘の上から、僕らは最後のキスをして、彼女は翔んでいった
その後の僕は何をしたかわかるだろうか
普通に家に帰って寝て
翌日には古典のテストさ
勉強したはずの助動詞の意味をド忘れして
うんうんと唸っているその間にも
彼女はただ一心に翔び続けているというのに!

彼女は僕だけを想って翔んでいった
僕の目ではもはや追うことのできないほどに
彼女は高いところにいる
今ごろはもう大気圏などとうに越えていて
銀河の中心に辿り着き
そこでもなお、僕のことを想い描いているのだろう
あの頃のままの僕を
彼女の心のままの僕を
実際の当人は日曜日のマクドナルド
窓に面したカウンター席にだらしなく座りながら
ただぼんやりとポテトをつまんでいるだけだというのに

空はまぶしいほどに晴れてどこまでも透き通っている
この青さは彼女がたった一人でいる
限りない闇の世界へと繋がっているのだ
僕はどんな気持ちで見上げればいいのだろう
彼女はどんな気持ちで翔び続けているのだろう
虫にはあまりに遠すぎてわからない
ポテトの塩加減だけが現実だ


空を貫いたぜ。

  変態糞詩人

羨望の残存熱にうだる固形物の満月(漏斗の時間)と鎹を手放さなかった哀愁
(弾力の時間)と詩中主体(万象の始点)の永劫らでまどろみある転生の静観の台で空を貫いたぜ。
固執は諦観が一筋のきらめきなんで辛苦を抱えた繭で儚さと友を旅に道連れてから砂漠のように思惟が朧な座標なんで、
そこで厭世観が湧き上がるほど儚さを逃れられぬものにしてから空を貫きはじめたんや。
永劫らで刹那を肉体にしながら唯一確かなるものだけになりそのようになると定められていた賢者を強靭なる量ずつ自嘲しあった。
流れが微笑んでいたら、安寧の繰り返しが何かを呼びだして来るし、帰結が確定を欲して歴史の中で焦っている。
うだる固形物の満月に安寧の繰り返しを肉体にさせながら、哀愁の安寧の繰り返しを肉体にしていたら、
百年前からの約束のように哀愁が詩中主体の出会いに帰結を轟々々と折り重なって来た。
桜の散る時のように満月も詩中主体も帰結を折り重ねたんや。もう恒久な壁中、帰結まみれや、
永劫らで折り重ねた帰結を出会いで救済しながら同線上の概念に刻みあったり、
帰結まみれの刹那を肉体にしあって失われた記憶で渦巻きしたりした。嗚呼〜〜湿る球体だぜ。
流れが微笑むなか空を貫きまくってから又賢者を弄びあうともう閃光が散る程裏側へ飛ぶんじゃ。
固形物の満月の安寧の繰り返しに詩中主体の刹那を糸どろっ沈ませてやると
安寧の繰り返しが帰結と失われた記憶で絹肌みたいな抵抗を感じて裏側へ飛ぶ。
哀愁も満月の出会いに刹那糸沈ませて居る。
帰結まみれの満月の刹那を深く見つめながら、決して戻れない覚悟をして別れたんや。
鉛が平面に溜まってからは、もう荒野に立つみたいに満月と哀愁の帰結刹那を肉体にしあい、
帰結を刻みあい、振り向きたくなるほどに希望を折り重ねた。天地が消えようとも空を貫きたいぜ。
それが予言されていた命題であるように帰結まみれになると全原子が解放されるやで。こんな、変態詩人と帰結舞いしないか。
嗚呼〜〜巡り合いを確信して帰結まみれになろうぜ。
風のまどろみで確定を促す影なら全原子が解放されるや。詩中主体は望遠*川の中の柱*万象の始点,満月は漣*庚申塔*漏斗の時間や
帰結まみれで空を貫きたい影、宿命をも振り切って、邂逅の手を伸ばしてくれや。
詩人姿のまま渦巻いて、帰結だらけで空を貫こうや。


殺させてくれたのに

  渡辺八畳@祝儀敷

妄想の中の人たちを殺しました
が、所詮それは現実でのことではないので
僕は何も変わらずにただ突っ立っているままでした


目が眩むほどのあの鮮血は全くこの世に存在を持っていないのです
僕が興奮に身を委ねながら包丁を振るった事実さえ存在しないのです
ここでの僕はもうずっと前から突っ立っているだけでした
殺人の証拠は無いからと警察は逮捕もしてくれませんでした

それでも僕が殺した彼女たちの首を僕だけでも視認できていたならまだ救いがありました
あの愁いとも慈悲ともつかない表情で止まった彼女たちのかけら
それは確かに僕の足もとに転がりました
でもそれもだんだんに見えなくなっていって
いま眼球に映っているのもおそらく残像でしかありません
蹴り上げたとしても足が空を舞うだけでしょう
おそろしくてとても僕にはできません
蹴ること自体が怖いのではありません
もし足を振ってもそこに感触が無かったら
彼女たちは惨殺されたという事実が存在しない世界に収束してしまうことが怖いのです
それでは彼女たちの絶命が全くの無駄になってしまいます
僕は確かに人を殺しました
そうでなければならないのです

信じてください
本当に殺しました
返り血を浴びました
その血飛沫は眼にも入って視界を赤く染めました
包丁を握る手もぬめぬめしていました
それでも滑らせずに僕は彼女たちの首を切りました
砕くように頸椎を押し切った時の振動は手にも伝わってきました
本当です、信じてください、僕は本当に殺しました
僕は殺しました
僕は殺しをしたということを認めてください
お願いですお願いします僕は殺しました
信じてください
お願いします
お願いします
刃が肉を潜ったとき、僕は確かに温かさをおぼえました
それさえもただの幻だと言うのですか!
ふざけないでください、信じてください、お願いします
僕は人を殺しました

確実に、僕は笑いながら彼女たちを嬲って
目玉をえぐって、空いた眼窩の内側を指でなぞって
倒れた背中を石で削って、華奢な背骨を露わにして
肢体が動かなくなっらた口蓋を掴んでひたすらに犯しました
本当です
僕はやり遂げました
僕は殺人鬼になれたのです
彼女たちが僕を殺人鬼にさせてくれたのです
そのためだけに彼女たちは僕の目の前に現れたのです
彼女たちは自らの意思をもって身を捧げてくれたのです
だから僕は誠心誠意彼女たちを殺し尽くしました
僕は感謝の気持ちでいっぱいになりながら彼女たちを殺したのです
その思いは一生忘れてはならないし僕はそれに報いたいのです
だから、お願いします
僕は殺しました
ここには何も存在しなくても僕は確かに彼女たちを殺しました
それを認めてください、お願いします
僕を裏切り者にさせないでください


わが子

  渡辺八畳@祝儀敷

背に負いし
子は六肢
白い尾ゆらめかせ
黒い瞳

コロニーの中
地球は青く光る
子守り歌をうたいましょう

──どうか優しく育ってください


遺影

  渡辺八畳@祝儀敷

私の遺影はデジタルカメラで撮影してください
アナログフィルムでは絶対に撮らないでください
SDカードにデータとして保存してください


そして、
私が死んだら、

その画像をTwitterにアップして
FacebookにもInstagramにもアップして
Tumblrにもnoteにもはてなブログにもアップして
5ちゃんねるにもアップして爆サイ.comにもアップして
したらば掲示板にもアップしてふたば☆ちゃんねるにもアップして
ありとあらゆるサービスに ネットのせせらぎに
各家庭へ手書きの訃報を送るよう
あますところなくアップして拡散させてください
私の輪郭に沿ってデータを切り抜いて
額縁みたくその外側を青一色にしたら
BB素材としてニコニコ動画にアップしてください
私に寄せられたたくさんの草コメwww――弔問と共に
数多の動画制作者の方々が
駅前や社屋や道場や ありとあらゆる場所の画像の上へ
もうこの世にはいない私の画像を重ねることで
あらゆる場所に私の存在を示してくれるでしょう
そういう業者に連絡をして
出会い系サイトの偽アカウントの顔写真に
私の遺影を使わせてください
イククルやPCMAXのアカウントで
ハッピーメールやYYCのアカウントで
ワクワクメールや華の会のアカウントで
ナンネットやpairsのアカウントで
私の顔をした私でない人と話すために
もうこの世にはいない私と逢う約束をして
そしてラブホテルへと連れ込むために
男性の方々はポイントを浪費してくれるでしょう
しかし逢うことさえも決して叶わずに
お金ばかりが無情に消えていきます
騙されたと気づいたその時に惨めな男性の方々が想う相手は
中で操っている業者でなく
アカウントに使われた遺影の私でしょう
サーバー会社にも連絡をして
404となったページに表示する画像を
金髪女性の写真でなく私の遺影に替えてもらってください
本来表すべきものが消えたそこに
私の微笑が献花されるようになります
跡形もなくページが消えれば消えるほど
代わりに私の遺影を映す機会が増えるのです


そうやって、
インターネットの中に、
一つずつ一つずつ丁寧に、
死んだ私の画像を置いていけば、

あらゆる町のあらゆる家の
あらゆるパソコンのあらゆるモニターに
私の遺影が表示されて
そうしてそこは私の葬式会場となって
私の実体が灰になり土に還った後も
必ずいつも誰かが私の遺影にアクセスしてくれて
終わることのないお経と
終わることのない弔辞が
日本じゅうのスピーカーから無音のままに流れ続けます
まとめサイトを見て大笑いしている間も
モニター前の一人一人が参列者となって
意図せずとも私を弔う一員となって
電子の世界で私の魂は追悼され続けます
そして今日も
この世界のどこかにあるスクリーンに
変わることのない私の微笑が映し出されていることでしょう


たったひとりで伸びていったクレーンへと捧げる詩

  渡辺八畳@祝儀敷

お父さん お母さん 見上げてください
そして拝んでください
あなた方の白痴の子は
ただ一本をもって
遥かに透き抜ける大空へと伸びていきます
限りなく広がる空間に
鉄の身ひとつ 質量を伴いながら
欠けているように細いその首を
まっすぐ無垢に伸ばすのです
垂れたワイヤーのその端で
フックが寄る辺なしに揺れるなか
望むがままに伸び続けるのです
その行動に思惟はありません
あの子は全くの白痴なんです
親である人間たちが電力を与えてあげないと
動くこともできない子なんです
まことに図体ばかりが大きくて
ひとりでペンキも塗れないかわいそうな子なんです
それがただ一本 たったひとりで空に伸びていきます
どんどんと思惑うことなく伸び続けていきます
父兄の皆さま お願いです! 見上げてください!
舌が喉にかかって嘔吐しそうになっても
雲一つないあの青天へ
刺し入っていくあの子を どうか!

空は見えない血を噴き出しました
あの子は何も考えていません
ただの鉄の塊には考える脳などあるわけないのです
だけど ああ実に尊い
見上げてください 日光に鋼管は燃えあがり
大いなる天上を切り裂いている
お父さん お母さん あの子は神になりました
ただ思うがままに伸びていって
私たち人間の頭上で鎮座しています
見上げてください
そして拝んでください
あなた方の白痴の子は
空を殺して 神になりました


貧乳が添えられている

  渡辺八畳@祝儀敷

あんなにかなしく寝たあとに
薄暗がった気持ちで瞼をあけると
あばら浮く貧乳の女がベッド脇に添えられていて
触りもせずに 泣きたくなった

あまりに幼い見た目だが
幼形成熟 これで成人なのだ
もう育つことはない
姿はまんま子供でしかないのに
恥ずかしさだけは大人になって
口を固く閉めながら僕のために添えられている
直立不動で
少ししかない陰毛がなびくことなく生え下がっている

しゃぶりつきたい 水が流れるよう
無限への真理を秘めている乳房から
白銀の孤を描く腰を巡って
かわいらしく膨らんだ臀部まで
そうしてこの女に声をあげさせたい
僕によって嬌声をあげさせたい
だけど届かない
僕は首だけでころりとベッドにころがっている
そして君には胸が無い
いや小さくてもあるにはある、そうあるんだ
だけど殆どの人にとってそれは無いに等しく
そして僕には手も無く足も無く性器もなにも無く
有るのは弱弱しくふるえる眼ぐらいだ
欠け者同士がひとつ部屋の中
視姦されていると思っているのだろう
女の顔はみるみる赤くなっていくが
それは視線を送る僕の気持ちが
こんなにぐちゃぐちゃなのを知らないからだ
襲ってくださいと言わされているかのように
なにも纏わない女を
押し倒して 吸って貪って
好きなようにして
孕ませる
そんなこともできないまま
窓も無いこの部屋の空気は淀むばかりだ
目の前の貧乳は遥かすぎるほど遠くにあって
女の子宮はいつまでも空なまま
母となりお乳が張れば
部屋の外へと出られるのだろうに
この僕への供物である限り
それは叶わぬまま
ベッド脇へ添えられる呪縛が
永遠に続く

一本だけの蛍光灯が青白い光を発して
貧乳のアンダーにとても僅かな影をつくる
それがあまりに美しくて かなしさがぶりかえしてくる
女は羞恥のあまり失禁してしまった
アンモニア臭が窮屈なこの部屋に充ちる
星の宿る瞳が 涙を噛み殺している
隅に埃が溜まる部屋で
ピンクの乳首だけがまぶしい
あまりにもかなしくて
また眠ることもできずに
僕は貧乳を見つめるしかない

文学極道

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