#目次

最新情報


曇天十也

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


狂日

  曇天十也



死は美しいか
本当に美しいか
あの詩人は死んでいた
わたしも死なねばならないか
種を蒔くとは、生を与えることであり
死を与えることと同義ではないか
それは、愛にも等しいのではないか


綿毛が飛び散る
それを受け止める母なる凡庸な大地
蔓延る無責任な愛
お前は、受け止められるのか
ただ増えていくだけのその愛を
朽ちて骨になることすらない愛を


愛される・・・幸せになること
水と光を貰って天に伸びるさま
愛する・・・不幸にすること
実った果実を取り上げるさま


やれやれ
くだらんことしか書いてないもんだな
羊の餌にでもしといておくれ
そら、働くぞ


恒転

  曇天十也




ジリジリ 陽炎
ジリジリ 陽炎
やあ、おはよう
明けない夜はないからさ
来てほしくない朝も来ちゃうの

ポツポツ 雨垂れ
ポツポツ 雨垂れ
やあ、おはよう
止まない雨もないんだって
みんなは雨が嫌いなの

クルクル 風車
クルクル 風車
やあ、おはよう
風はどこから来るんだろう
じーじは元気にしてるかな

回れよ回れ
止めたくても止まらないもの
浮かべよ浮かべ
流れに身を預けて進めるもの
振るえよ揺れよ
キョウシンしようよ

プルプル
プルプル
やあ、
変わらないって素敵なの
あなたは変わってしまったの


最後の最期

  曇天十也

指輪を外して天に投げた
そうすれば何かわかる気がした


僕は彼女と塀の外を眺めた
そこに広がる名も知らない色を見つめて
ウツクシサを体一杯に吸い込み
僕は自分に呪いをかけた
彼女から学んだ呪いを
彼女のナイフで死ねない僕は
そうするしかなく
彼女の血で、自分に呪いをかけることにした

絶望と快楽とに包まれ
長い朝の過ごし方を
川辺に寝そべり考える
魚の跳ねる音
水が砂を運ぶ音
鳴り響く着信音
どこに向かって流れゆく

少しずつ体の中が折り畳まれて
四角くなっていく
ピタと頂点が重なる時僕は死ぬのか

倍倍に増える頃を思い出して、
コンクリートで眠る


わかったことは
僕は薬指を触る癖があった
ただそれだけだった

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.