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朝顔 - 2019年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


立秋

  朝顔


小玉すいかを半分食べて
洗濯機をまわす
ワンピースやTシャツや下着を皺を広げて
並べて干す
ビルの向こうに夕焼けが落ちると
涼しくなったベランダに出て
ぱりんと乾いた服をたたむ
一枚一枚ていねいに箪笥にしまう

きちんとたたんで
引き出しにしまい込む
想い出がだんだんふえて来た

鱗雲がまぶしい


まあちゃん

  朝顔

ハチ公の前でまあちゃんと会った
切れ長の目のまあちゃんは
虫眼鏡みたいなメガネをかけた
気の強そうな旦那さんと
女の子の赤ちゃんを連れていた
まあちゃんのワイドパンツはゆったりしていて
初夏の風にひらひら揺れる

一生懸命次から次へと喋る私に
まあちゃんはにこっとして
「もうちょっとゆっくり」と言う
つばめグリルの真ん丸のトマトを
口いっぱいにほおばりながら
まあちゃんは泣き出しそうな娘さんを
よしよしとあやしている

まあちゃんと出会ってからの私は
いろんな男の人を追っかけなくなった
代わりに電車で三駅の作業所で
リバティプリントのきれっぱしを選びながら
お人形を作るようになっていた
男の人は結局私を救わなかった
頑固で意地っ張りの自分の中に力はある

トマトのようなまあちゃんに
昔は私は僻んで凹んだけど
まあちゃんは私の詩が素敵だと言う
私はもう俯かないで
背筋をしゃんとして歩いて行く
昨日は自分がなりたい人形を縫った
まあちゃんに似たお人形を明日作ろう

文学極道

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