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滝沢勇一

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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喉が渇いたのでソーダを飲んでみた

  滝沢勇一

かどの自動販売機でオレンジ色のソーダを買ったボタン押した落ちてきたら瓶だった
自動販売機付属の栓抜きで蓋をもいで歩きながら飲んでいたらオレンジ色の高圧ナトリウム灯のした道端に乾いた蝉の死骸
乾いた蝉の死骸
乾いた蝉の死骸を見ると乾いた蝉の死骸のことを思い出す。
夏の日、太陽、ヒル十時
ぼくのなつやすみ
蝉は乾いて死ぬ。
という趣旨の絵日記
昼間のテレビ教育番組、子供たちおにいさんおねいさんメルヘン色のスタジオセット
声に違和感、画の異物感
蝉の声が降ってくる
ガラス鉢(バチ)金魚二匹と水と気泡、乾いた餌草焦げ茶色
道端の蝉、半分砕けてこなっごな
金魚が水面にはらを浮かせていたならそれはしんだ証拠、腹は白に近い銀色
半分の蝉の死骸、飴色の昆虫粉
南部鉄器製の風鈴、ゆれて鳴る高音
ゆれる
ゆれる
個人的には、
夏の半そでの白い制服のまま、群青の深夜からオレンジ色の明け方にネオンイエローと黒の工事現場色ロープでくび吊って死んだ3つ違いの小麦色のいもうとのゆれを思い出す。
スクール水着型に白い肌小麦色の首
にのうで指先太ももあし
あさの透明な青白いひかりに透けて硬い白い乳房とピンク色の乳首が透ける
夕涼みの午後と同じ硬くて白くてピンク色
夕涼みの午後、いもうとは寝ていてひとの濃い体温の匂いがした。

嘘です。
いもうとはいません。

妄想というより白昼夢、時刻は午後の3時過ぎ
買ったソーダを飲む
オレンジ色のソーダ、気泡がつぶつぶ
熱帯の海に放り投げられたとき、深く深く群青に吸い込まれそうになりながら上を向いたらオレンジ色の液体のなか、気泡身体からのぼってってきらきらきらひかりが砕けたやつが降って刺さってくちのなか合成甘味料に似たひとの濃い、体液のあじがした
夏休みを思い出した。
残ったオレンジ色のソーダを乾いた蝉の死骸にかけた
空き瓶は道端に捨てた
余計に渇いた喉
くちのなかに合成甘味料のあじが残った
甘ったるいサッカリンナトリウムだった。

文学極道

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